プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンCに「0-6」のチェルシーだが、
サッリ解任の決断を下すのは尚早。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2019/02/18 13:00
メガクラブ同士の一戦でこれほどまでのスコア差がついてしまうのは珍しい。サッリ体制のチェルシーにとって正念場だ。
屈辱のチャントまで響く。
最後までアウェイサポーター席に残った律儀なファンは、試合終了後にもマンCのファンにいたぶられた。スタジアムに『ワン・ステップ・ビヨンド』という曲が流れたのだ。
ロンドン出身のスカバンド『マッドネス』が'70年代にカバーしたヒット曲だが、これは「チェルシーがホームでの大一番に勝った」後の定番である。そんな曲を意図的に敵地での大敗後に聞かされたのだから、傷口に塩を塗られるとはこのこと。なおロンドンまで列車で2時間半の帰途が遥かに感じられたファンの中には、筆者も含まれる。
プレミアリーグで6失点敗戦を初体験したショックと、暫定監督を含めれば過去15年間で13回目の監督交代が現実味を帯びるやるせなさ、重苦しい空気。アブラモビッチ政権下の中で、最も攻撃的スタイルの確立を予感させたサッリも、就任1年目で首が危ういと言われる堂々巡りの虚しさ……。
3年目のペップ・グアルディオラが現任地での「ベストマッチの1つ」と認めた一戦は、サッリ就任7カ月後のチームの未熟さと同時にクラブの至らなさを、今さらながらに痛感させるものだった。
「自分の首が心配では?」
試合後の会見場に現れたサッリには、いきなり「自分の首が心配ではないですか?」との質問が飛んだ。確かに、あってはならない大敗だった。だが6失点での敗北は、マンU、リバプール、アーセナルといった強豪も過去に味わっている。
前々節のボーンマス戦(0-4)からアウェイで計10失点での2連敗となれば、何かを変えるべきなのは明らかだ。とはいえ、その「何か」が監督と理解されてしまうのがチェルシーの悲しさである。さっそく後任候補として2部からの昇格を狙うダービーで監督に初挑戦中の“レジェンド”、フランク・ランパードの名前も挙げられた。
過去も攻撃志向が強い監督にとって、チェルシー就任1年目のシーズン終盤に差し掛かる前の時期は鬼門だった。1人目のルイス・フェリペ・スコラーリは開幕7カ月目の'09年2月上旬に解雇された。2人目のアンドレ・ビラスボアスも、開幕8カ月目の'12年3月初旬で見切りをつけられた。
しかし今回は「3度目の正直」ではないが、チェルシーで変えるべき「何か」はサッリではなく、長期展望に欠ける経営陣のあり方だと言える。