猛牛のささやきBACK NUMBER
根尾&小園に「負けてはいけない」。
オリのドラ1太田椋の自信と父の夢。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2019/01/11 08:00
打撃投手を務める暁氏を父に持つ太田は「父と同じ球団でうれしい」と語り、入寮時にはけん玉をする姿も。
坂本勇人のようなショートに。
太田が思い描く理想像は、巨人の坂本勇人のような“3番ショート”だと仮契約の際に語っていた。
「3割打って、ホームランも20、30本打ちたいですね。打点も100で」
記者に囲まれながら落ち着いて話す息子の様子を少し離れたところから見守っていたのは、オリックスで打撃投手を務める父の暁さんだった。
自身が打撃投手を務めるチームに、息子が入団する。それもドラフト1位で。
「どこの球団でも、と思っていましたが、びっくりしました。1位で呼ばれたことに驚きました」
驚きの次に押し寄せたのは喜びだった。自分と同じ職業を選んでくれたことは「嬉しいですね」と相好を崩した。
入寮の際には、「とにかく挨拶だけはしっかりするように」と言って息子を送り出したが、「心配しかないですね」と父親の顔をのぞかせた。
父が“一軍”で待っている。
暁さんは1988年のドラフト6位で内野手として近鉄に入団。一軍で3試合に出場し、引退後は打撃投手となった。
息子の椋も中学生の頃は暁さんのボールを打って練習しており、「今までで一番打ちやすいボールだった」と振り返る。
「また(父の球を)打ちたいですね」と言う息子。
父もその日を心待ちにしている。
「頑張って一軍に上がってもらって、一軍で投げたいですね。その時はしっかり抑えたいと思います。いや、ウソです(笑)」
暁さんの球を打ったことがあるオリックスの選手は、「球がすごくキレイな回転で、全部同じ球が真ん中にくる」と話していた。
シーズン中は主に、ステフェン・ロメロなどの外国人選手や主軸選手を担当している。それはチームからの信頼度の高さを表している。
息子とはいえ、シーズン中に父に投げてもらうには、主軸を張るような存在になることが必要だ。その日を目指し、17歳がプロでの第一歩を踏み出した。