“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
C大阪有望株が小嶺先生の愛弟子に。
鈴木冬一、1度きりの選手権挑戦記。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/01/07 16:30
帝京長岡戦でゴールを決めて喜ぶ鈴木冬一(18番)。湘南ベルマーレでの活躍も期待される。
湘南内定という新たな未来。
だが、新たな仲間と過ごす日々は毎日が刺激的だった。“最強のハードワーカー”へと変貌したことで、2019年の湘南ベルマーレ入りも内定。新たな未来を掴み取った。
そして迎えた最初で最後の選手権。インターハイ予選の反省を胸に、3年連続の選手権出場に導いた。そして同校にとって初戦となる2回戦の浜松開誠館戦。会場となったNACK5スタジアム大宮のスタンドにはC大阪U-18の盟友・瀬古歩夢と、菅原由勢(名古屋グランパス)、宮代大聖(川崎フロンターレU-18、トップ昇格)、久保の4人のU-17日本代表のチームメイトが応援に駆けつけた。
「本当に嬉しかった。応援に来てくれたということは、これまで自分が築いた彼らとの信頼関係があったからこそ。そういうのをこれからも大事にしていきたいと思いましたし、本当に良い仲間を持ったなと思いました」
瀬古には「頑張れよ」と短い声をかけられたが、「アイツはあまり深く語らないタイプの人間なので(笑)。でも伝わりました」と、かつての仲間の想いを持ってピッチに立った。
全国大会初ゴール、そして敗戦。
この試合、鈴木が決勝弾の起点となって1-0で勝利すると、迎えた3回戦・帝京長岡戦、20分に待望の瞬間がやってきた。
CB大切達矢のクリアボールに鈴木が真っ先に反応し、ドリブルを開始。帝京長岡のCB小泉善人が寄せに来るが、フィジカルコンタクトで相手の体勢を崩してから、余裕を持って左足一閃。ボールはゴール右隅に吸い込まれた。
長崎総合科学大附属での全国大会初ゴール。応援団が陣取るスタンドの前に駆け寄り、胸のエンブレムにキスをして渾身のガッツポーズを見せた。この1年間の想いと、受け入れてくれた仲間たちへの感謝の気持ちを示すゴールパフォーマンスだった。
しかし、その後チームは逆転を許す。鈴木はスプリントを繰り返して帝京長岡ゴールに迫ったが、わずかに届かずタイムアップ。3回戦敗退に終わり、同時に長崎での1年が幕を閉じた。
試合後、彼はゲームキャプテンとして涙を見せることなく、気丈に振る舞った。だが、「グラウンドの中では堂々としていたのですが、ロッカールームに戻って、小嶺先生からは特に言葉をかけられていないですが、顔を見た瞬間に涙があふれ出てきた」と、恩師の顔を見て泣き崩れた。