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酒井宏樹がベルギー戦後に語った、
W杯での涙と「次へ行く理由」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2019/01/06 08:00
マルセイユでリーグアン屈指のサイドバックとなった酒井宏樹。アジア杯でもその経験値を生かしてほしい。
悔しさを持てるのは凄く幸せ。
前回のブラジルワールドカップでは出場機会が訪れなかった。自分のポジションには、いつも内田篤人がいた。マルセイユに来たことで彼の凄さも理解できたという。
「人をうまく動かせれば、とんでもない相手とも互角に戦える。そのことが最近になって良く分かるようになったんです」
酒井は今の自分を素のままに、ワールドカップで出したに過ぎない。あらゆるものが見えてきたからこそ、己の未熟な部分にも気づき、芽生えた悔しさが離れない。
笑顔に切り替えた彼は前を向く。
「サッカー選手にとって、悔しさを持てることは凄く幸せ。その舞台に立って味わえたのは良かったなって思います。次に行く理由を見つけることができましたから」
夜空が霞んだのは、決意の涙がそうさせた。いずれきれいな空を眺めるために。
(Number957号『酒井宏樹 僕らはベルギーの息の根を止められた。』より)