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内田篤人流、欧州で活躍する秘訣。
「結局根性。嘘をついちゃダメ」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byEri Kawamura
posted2019/01/03 17:00
欧州での経験を語ってくれた内田篤人。鹿島復帰1年目の2018年にはACL制覇に貢献した。
日本は綺麗にプレーしがち?
「だからこそ、自分がグラウンドでプレーする姿を見せられていないことが、本当に申し訳ない。本音を言えば、スタジアムや練習場に来てくれるみなさんには、“CLに出られる選手って、こんなもんじゃないんだよ”って伝えたいんだ。でも、それは俺自身がグラウンドで示さなきゃいけないってことも、わかってる」
'15年に手術した右膝は、今なお完治せず。鹿島に戻ってきてからも、負傷離脱と復帰を繰り返している。さらに、ドイツと日本とでの、サッカーのスタイルの違いにも戸惑った。
「やっぱり日本だと、みんなポゼッションを意識して、良い意味でも、悪い意味でも綺麗にプレーしようとする。例えばカウンターのときの判断。シャルケにいたときに、日本代表の試合を見たドイツ人のお手伝いさんに言われたんだ。『なんで日本の選手たちは、せっかく攻めているのに相手が守備に戻ってくるのを待つの? なんでシャルケみたいに速く攻めないの?』って。そのお手伝いさんは、サッカーのこと全然詳しくないんだけど、そういう人ほど違いに気づくんだろうな。なるほどなって」
俺が思う理想のサイドバック。
鹿島でも、シャルケでも、「結果を出す」ことにこだわり、「結果を出す」ことで存在価値を示してきた男が、ベンチメンバーからも外れ、スタンドから試合を見る現状が、悔しくないはずがない。
それでも、スタンドから俯瞰的にチームを見て、気づいたこともある。
「上から試合を見ていると、“あ、俺ならここにパス出すよな”“あそこにスペースがあるから、こう動くよな”ってイメージできる。だから、頭の中で動いている男が、今、俺が思う理想のサイドバックだね」
最後に、ちょっとだけ嬉しそうに報告してくれた。
「最近、体の調子が良いんだ。'15年以来、初めてなんじゃないかってぐらい、ちゃんと練習もできている。今はとにかく離脱せずに、長く練習したいんだよね」
インタビューから数日後、内田はAFCチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦の天津権健戦に先発フル出場し、2-0の勝利に貢献した。
「30歳。終わるには、まだ早いよ」
この言葉も、きっと嘘じゃない。
(Number961号『内田篤人「欧州では嘘をついちゃいけない」』より)