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川口能活×楢崎正剛「好敵手として」
レジェンド守護神対談完全版・前編
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/06 11:15
「ヨッちゃん」、「正剛」と呼び合う仲。日本サッカーのGKの概念を変えた2人は、本当にお互いを認めているのだ。
存在感の能活、確実性の正剛。
――GKの中にも、いろんなタイプの選手がいます。お互いのプレースタイルの違いは、どう感じていましたか。
楢崎 ヨッちゃんはコーチングも積極的にやっていたし、やっぱり存在感があった。僕にないものをいっぱい持っていましたからね。積極的に前に飛び出す守備範囲の広さだったり。あとは大舞台に強いところ。それは「すごいな」って思っていた。
川口 僕はどちらかと言うと、存在感を出して守るスタイルです。でも正剛には、若い頃から確実性があった。ゴールマウスを守った上で、守備範囲も広い。若いGKとは思えないような安定感があったから、僕も見習っていたし、「学ぶべきところだな」と思っていましたね。
だから、代表で一緒に練習する時も、Jリーグで対戦する時も、常に正剛を注視していた。良いところは学んで、盗んでいきたいなと。2人とも若い頃からずっと代表に選ばれて、でも、レギュラーのポジションは1つしかない。僕が出たり、正剛が出たり、常に切磋琢磨してきたから、レベルアップできたっていうのは、すごく感じていました。
――代表合宿中、GK陣は常にユニットで動きます。その際、技術的な話もするのですか?
楢崎 そんなにしないね。Jリーグのクラブでも、GKは一緒にいる時間が長いからか、普段はしょうもない話をしている(笑)。
川口 そうそう。「今日の練習、何やるんだろう」とか。
楢崎 きついフィジカル練習を「どうやって凌ごう」とかね(笑)。
――代表の練習では、数え切れないほどのシュートを受けてきたと思います。その中で、止めるのが難しかった選手は誰ですか。
川口 僕はヒデ(中田英寿)です。試合前のウォーミングアップ中に打つシュート。
インステップでの強烈な一発で、“タイガーショット”みたいな(笑)。
楢崎 パンチ力がすごかったよね。
川口 あのパンチ力は、日本人の中では一番だったかな。練習の中でのシュートもすごかったけど、ウォーミングアップ中の、アドレナリンを出す段階で打つシュートは、もっとすごかったですからね。
楢崎 俺は、シュン(中村俊輔)のFKかな。スピードも、正確性も、駆け引きも。
川口 駆け引きはうまかったね。俊輔のボールは、マリノスで何千本も受けてきて、癖も見てきたから、何となくどこを狙っているかわかる部分もあったんです。でも、敵になってみると「こいつ、こんなにいやらしいんだな」ってわかった。
楢崎 日本人のキッカーでは一番だろうね。
川口 あとはヤット(遠藤保仁)。ボールが重いんですよ。GKにとっては重いけど、味方にとっては合わせやすいようなボール。俊輔とヤットのFKは別格かな。