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川口能活×楢崎正剛「好敵手として」
レジェンド守護神対談完全版・前編
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/06 11:15
「ヨッちゃん」、「正剛」と呼び合う仲。日本サッカーのGKの概念を変えた2人は、本当にお互いを認めているのだ。
GKをやめたいと思わなかった?
――GKはミスが失点に直結するポジションです。代表でのミスともなれば、精神的なショックも大きいと思います。ミスを引きずることはありませんでしたか。
楢崎 俺は1回、引きずったことがありますよ。'01年にアウェーでフランスに0-5で負けたときに。ミスから失点して、次の試合からはスタメンから遠ざかって。あの時は、精神的に引きずったというか、挽回しようにもその機会がなかった。「代表でのミスは、代表で取り返そう」と思っていたから。ずっと「どうにかして挽回したい」と思っていましたね。
川口 僕らは、どちらかがミスをすれば、すぐにレギュラーが入れ替わる。その繰り返しでしたから。だからこそ、仮にミスをしても引きずっていられない。常にポジティブに、次のチャンスまで頑張る。そういう緊張感の中で戦っていた気がします。
楢崎 緊張感はあったね。練習でも。
川口 そう。練習でもミスはできないし。
楢崎 お互いが良いプレーをすれば、自然と目に入る。だから「負けていられない」って。自分が試合に出ている立場だったらなおさらだし、出ていないときでも。
――ストレスも溜まるポジションですが、GKをやめたいと思ったことはありませんでしたか?
楢崎 俺はあんまりないかな。
川口 昔、土のグラウンドでセービングして、足が血だらけになったこともあったけど、それでもやめたいと思ったことはなかったね。
楢崎 親のほうが「やめてくれ」と思ったかもしれないね。学生の頃は練習で夜遅く帰って、朝早く出て行く。洗濯とかも大変だっただろうし、親に任せっぱなしだったから。道具も、GKはスパイクだけじゃなくて、グローブも必要だからね。
川口 今と違って、グローブの値段も高かったもんね。
(後編に続く)