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川口能活×楢崎正剛「好敵手として」
レジェンド守護神対談完全版・前編 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/01/06 11:15

川口能活×楢崎正剛「好敵手として」レジェンド守護神対談完全版・前編<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「ヨッちゃん」、「正剛」と呼び合う仲。日本サッカーのGKの概念を変えた2人は、本当にお互いを認めているのだ。

'04年アジア杯と日韓W杯で……。

――代表のベンチから試合を見て、お互いのプレーで「すごい」と思ったものは?

楢崎 僕は完全に'04年のアジアカップ。特に準々決勝のヨルダンとのPK戦でのヨッちゃんは、すごかったですよね。当然、僕にも出番が欲しいという気持ちもあったし、反日感情の高まった中国でいろんなこともあったけど、あのPK戦は震えた。最初の2人が外した時点で「もう負けやろ」って思ってたから(笑)。最後の瞬間は、「えーー! 勝ったで」って(笑)。あの大舞台での強さは、やっぱりメンタルじゃないですか。

川口 いや、思い込み。「できる」って思い込みかな。PKが好きなわけでもないんだよ。逆に「止めなきゃいけない」ってプレッシャーになる時もある。PKって、一番注目される場面ではあるけど、PKだけがGKのすべてじゃないから。

 正剛のプレーでは、やっぱり日韓W杯ですね。自国開催の大会での、あのパフォーマンスはベンチで見ていても頼もしかった。もちろん海外でW杯を戦う難しさもあるけど、自国開催の精神的なプレッシャーは、いくらホスト国の利点はあるとはいえ、半端じゃない。その中でああいう安定したプレーで勝利に導いたことは、頼もしかった。

楢崎 でもヨッちゃんはフランス大会の時、日本が初めて出たW杯なのに、普通にやっていた。負けはしたけど、何度もシュートを止めていたし。今の日本代表と比べると、世界からはレベルも下に見られていて、劣勢の展開になることも多かったのに、普通にプレーしていたよね?

川口 言われてみたらそうだね(笑)。でも、日本が下に見られていた分、チャレンジャーとして臨めていた部分はあるよ。もちろんプレッシャーはあるけど、自分にとっても日本代表にとっても初めてのW杯だったから、挑戦者の気持ちでできた。というか、あんまり考えていなかったね。いろいろと考えすぎると、ダメなんだよね。

――W杯の舞台でも、緊張しませんか?

楢崎 さすがに、多少は緊張しますよ(笑)。でも、慣れてくればね。

川口 あんまりしない。むしろ一度だけ緊張したのは、ジュビロ磐田時代の'08年にベガルタ仙台と戦ったJ1・J2入れ替え戦かな。あの試合は、W杯予選より緊張した(笑)。特にホームの第2戦。序盤にクロスからヘディングシュートを打たれて。それは外れたんだけど、バックステップしながらシュートを見送る時に、足がズルッと滑った。

 その時に「俺、緊張してるな。ガチガチだわ」と思って。今までそんなことなかったからね。やっぱりあの試合は「磐田をJ1から落とすわけにはいかない」って思っていたから。日本にとってのW杯は、ある意味、挑戦だったけど、あの試合には今まで味わったことがないプレッシャーがあった。

楢崎 それを言われたら……俺は全然緊張してないな(笑)。

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