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MotoGP6年目で5回の年間王者に。
“転倒王”マルケスが最強の理由。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2018/12/18 10:30
過激な走りが魅力のマルク・マルケスだが、その転倒グセもすっかり名物に。怪我が深刻にならないのが救いだが……。
安定的に上位に入り続ける強さ。
もちろん、マルケスというライダーの進化も目を見張るものがある。
これはバイクの性能が安定してきたからこそできる、ということなのだろうが――フリー走行では、45分間のセッションを1セットのタイヤで走行する。天候が良ければ、金曜日の2回のフリー走行でフロント2種類、リア2種類のタイヤテストを行い、決勝のタイヤをほぼ決める。現在の予選方式では、2日間3回のフリー走行で10番手以内だと、グリッド獲得の権利を得る。
先にも書いた通り、現在のMotoGPクラスは、1秒差に15人がひしめく大接戦のため、フリー走行も常にタイムを狙っていかなければならない。
そういう状況の中でマルケスは、常にしっかりと上位10人の中に入っており、予選ではソフトタイヤでPP(今季7回はクラス最多)を狙って行くという、だれにも真似のできないハイレベルな走りを続けているのである。
さらに、数年前から話題になっている、普通なら転倒しているようなスライドも、膝と肘を使って立て直す“だるま起こし走法”が完成の域に達し、今年は何度も転倒寸前のピンチを逃れることに成功している。このことと“転倒王”の勲章が決して無関係ではないことは、明らかである。
若いライダーにも刺激を与え続けている。
トレーニングは楽しくがモットーのマルケス。
以前のように一年中テスト走行があった時代とは違い、いまは、限られた日数しかテスト走行ができない。
ライダースキルを磨くためには、ダートトラックやモトクロスなど普段の練習が重要になっているのだが、マルケスの練習量は、ライバルは勿論のこと、若いライダーたちにも大きな刺激を与えている。