モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
MotoGP6年目で5回の年間王者に。
“転倒王”マルケスが最強の理由。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2018/12/18 10:30
過激な走りが魅力のマルク・マルケスだが、その転倒グセもすっかり名物に。怪我が深刻にならないのが救いだが……。
108戦して106回の転倒!!
この6年間の転倒数は、108戦して106回。
バレンティーノ・ロッシの25回、ホルヘ・ロレンソの33回、アンドレア・ドビツィオーゾの35回と比べても、その数の多さに驚かされる。
特に、タイヤがブリヂストンからミシュランに変わったこの3年間は、タイヤパフォーマンスが発展途上にあり、マルケスだけでなく全体的に転倒数が増えている状況だ。
しかしマルケスは、フリー走行、予選で限界を探るチャレンジングなライディングをしてから、決勝では絶対に転ばない走りをしているので、それが過去6年間で5回のタイトル獲得という実績を生んだのだろう。
その転倒も……実はタイトなコーナーでのブレーキングミスがほとんどで、リスクの大きな高速コーナーでの転倒はほとんどないというのである。
規制だらけの近年のGP環境。
この傾向は、厳しい燃費、シーズン中のエンジン開発禁止と使えるエンジン数の制限、さらに、電子制御でいろんなことがコントロールされていることからハード面でアドバンテージを築くことが難しい時代だからこその、マルケスなりの対処なのだろう。
これらの結果として、いまのMotoGPクラスはブレーキング競争が一段と厳しくなっており、マルケスはその勝負所で常に限界の走りを探っていることが分かる。
MotoGPマシンのパフォーマンスに大きく影響した「ECU(エンジン・コントロール・ユニット)」が2016年シーズンから共通になってからは、ファクトリーチームとサテライトチームの差がなくなり、そうした傾向に一段と拍車がかかった。
フリー走行、予選では、トップから1秒差に10人以上、多いときは15人前後がひしめき合うことも多い。
そして決勝レースも、ミシュラン時代になってからは、まだブリヂストン時代のような安定感が得られておらず、レース序盤はペースをキープし、終盤の勝負に備える……というような混戦になることも多い。