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MotoGP6年目で5回の年間王者に。
“転倒王”マルケスが最強の理由。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2018/12/18 10:30
過激な走りが魅力のマルク・マルケスだが、その転倒グセもすっかり名物に。怪我が深刻にならないのが救いだが……。
3連覇とシーズン9勝の意義。
そういう状況の中で、マルケスの3年連続チャンピオン獲得と今年のシーズン9勝という数字は、ワークスチームだけの戦いだった以前の時代とは比べられないほどレベルが高く、価値があるものであり、マルケスがいかに突出した実力の持ち主であることかを証明しているのである。
ホンダ・レーシング・コーポレーションの横山健男テクニカルディレクターは、マルケスのタイトル獲得の要因をこう分析する。
「去年のモデルに比べて加速の領域で大きく前進した。
この結果、'16年、'17年シーズンでは、ブレーキングで無理をさせてしまいタイヤに厳しい走りを強いてしまったが、それが今年はかなり軽減でき、タイヤに厳しい大会で勝つことができた。
それまでフロントはハードコンパウンド(硬いタイヤ)しか選択できなかったが、今年はソフト側の選択もできるようになり、勝利を呼び込むことができたのだろう。
もうひとつは、シーズン前半戦で、この数年勝てなかったスペインとフランスで勝つなど、前半戦(9戦)でマルケスが5勝(ホンダとしては通算6勝)できたことが大きい。このアドバンテージで後半戦は戦略的に余裕が生まれたのだろう」
ドゥカティに全面的に追いついたホンダ。
昨年、大きな進化を遂げたドゥカティに対してホンダは加速、最高速の領域で遅れていたが、今年は電子制御と空力面の大きな進化で、持てるエンジンパワーをしっかり発揮できるようになったという。ドゥカティ勢と互角の走りができるようになったのだ。
それまでドゥカティに先行されていた技術的な部分でも追いつき、さらに今年はホンダ独自の空力面のアイデアやカーボン・スイングアームの実戦投入など、ミシュランのタイヤパフォーマンスの向上をラップタイムという結果につなげることにまで成功した。