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朝日杯、アドマイヤマーズの戦術は、
「牡馬で牝馬を負かすときの定石」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/12/17 11:30
今季はGIでなかなか勝てなかった名手デムーロ。朝日杯を勝って、これで歴代最多タイの同レース4勝目となった。
牝馬は牡馬に威圧されて下がる。
ほとんど出入りのないまま4コーナーへ。
グランアレグリアは持ったままだったが、アドマイヤマーズのデムーロは激しく手綱をしごいて直線に入った。ヨーイドンの瞬発力勝負にならないよう、自分から早めに動いたのだ。
直線入口、グランアレグリアが先頭のイッツクールの外に並びかけようとした次の瞬間、アドマイヤマーズが外から一気に進出し、グランアレグリアに馬体を併せた。
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2頭が真横に並んだとき、接触したわけではないのに、グランアレグリアが気圧されたように内にもたれた。
牝馬は牡馬と馬体を併せたら威圧されて下がってしまう――というのが定説になっているが、そのとおりのシーンだった。
もちろん、デムーロは意識して、「牡馬で牝馬を負かすときの定石」の戦術をとったのだろう。
アドマイヤマーズとグランアレグリアがびっしり馬体を併せたのは10秒にも満たなかったが、キャリア2戦の2歳牝馬に、この急激なプレッシャーは相当こたえたのだろう。逃げるように内埒沿いに行き、アドマイヤマーズと馬体を離したらまた伸びかけたが、そこまでだった。
ダイワメジャー同様、最後のひと伸び。
道中は好位の内につけ、ラスト200m地点で外に出したクリノガウディーが凄まじい脚で伸びてきた。
一瞬、アドマイヤマーズに並びかけるかに見えたが、その差はなかなか縮まない。
後ろから来られると、またアドマイヤマーズがグイッと伸びるのだ。
この馬の父ダイワメジャーも同じように後続をもてあそぶようなところがあった。2004年の皐月賞でデムーロが騎乗したダイワメジャーは、ゴール前で後ろからコスモバルクに迫られると、もうひと伸びして勝った。14年の時を経て、父仔に共通する強さを引き出したデムーロの技量には恐れ入る。
アドマイヤマーズが最後まで力強く伸び、先頭でゴールを駆け抜けた。