プレミアリーグの時間BACK NUMBER
最下位フルアムにラニエリ監督就任。
レスターに続く奇跡の残留なるか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/11/27 17:00
ミラクル・レスターの立役者となったラニエリ監督。フルアムを救えるか。
レスターでの成功を生かせるか。
慢心やおごりはないという意味合いで、レスターでのリーグ優勝を「もう過去の出来事だ。忘れたよ」と言うラニエリだが、忘れてもらっては困る事実もある。
「ティンカー・マン(いじくり屋)」としての自分を封印し、ほぼ固定に近いメンバーで戦い続けたことで、安定した土台が築かれた事実だ。新たに率いるフルアムでは、ユース出身で今季リーグ戦7試合出場のマーカス・ベッティネッリを筆頭に、第12節までに3名が起用されたGKを見定めることから始めるべきだ。
国内メディアは、新監督が「なすべきこと」として主砲アレクサンダル・ミトロビッチの蘇生と、新星ライアン・セセニョンの成長促進も指摘している。前者はレンタル移籍中の昨季後半に得点源となったが、完全移籍した今季は、前線で孤立したままの試合が増えた。
ADVERTISEMENT
18歳の後者は、左のウイングバック、ウインガー、前線アウトサイドとポジションが変わる状況下で、リズムと輝きを失ってしまった。
ドリンクウォーター獲得の噂。
筆者は、新監督にとってのキーポイントは、怪我が続くトム・ケアニーのいたわり方と使い方と見る。27歳のMFは、昇格を遂げた昨季最大の功労者。シーズン半ばから23試合続いた2部での連続無敗は、ケアニーの戦列復帰とほぼ同時に始まった。
ミトロビッチの力強いポストプレーやセセニョンの裏に抜け出すスピードが威力を発揮したのも、4-3-3システムのなか3センターの一角を務め、相手ゴールに向かう果敢さと、キープやパスに見られる巧さを持つケアニーと頻繁に絡むことができたからだ。
巷では、ラニエリが好む4-4-2システムの中盤センターに、冬の移籍市場でチェルシーからダニー・ドリンクウォーターをレンタルで獲得するとの噂がある。ベンチに甘んじているセンターハーフ自身の不満、地元同士だが良好な両クラブ間の関係、そしてレスターでの優勝監督と主力という間柄を考えれば現実味はある。
しかし、約3年半前にフルアム入りした当時、攻守両用の優れた「中枢」として評価され、マイケル・キャリック(現マンUコーチ)とも比較されたケアニーは、ピッチの中央でドリンクウォーターに勝るとも劣らぬ存在感を発揮できるはずだ。