プレミアリーグの時間BACK NUMBER
最下位フルアムにラニエリ監督就任。
レスターに続く奇跡の残留なるか。
posted2018/11/27 17:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto press
「リスク・フリーでレディ・メイド」
フルアムのアメリカ人オーナーによる新監督評だ。前任のスラビシャ・ヨカノビッチが、今季プレミアリーグの解任監督第1号となったのは11月14日。その3日前、第12節を終えてリーグ戦6連敗となった最下位チームに招かれたのが、クラウディオ・ラニエリだ。
オーナーが人選理由に挙げた、フルアムに「打ってつけ」という表現には頷ける部分もある。プレミア指揮は今回が3度目。本拠地である西ロンドンには、スタジアムが3kmと離れていないチェルシー監督時代(2000年9月~2004年5月)に「我が家」を構えてもいる。
ちなみにフルアムの今季ホーム開幕戦でのこと。1点ビハインドのハーフタイム、攻撃的な鋭いギターのカッティングが印象的で、タイトルを直訳すれば、いみじくも「ロンドンからの呼びかけ」となるクラッシュの名曲『ロンドン・コーリング』が流れたクレイブン・コテージのスタンドにも、ラニエリはいた。
就任会見での発言によれば、その後もホームゲームには度々足を運んでいたとのこと。地元にもチームにも明るいベテラン監督は、昨季限りでナントを追われており、ヨカノビッチ解任と同時に雇用できる状態だった。
チームの空気を明るくできる。
しかし、前半の「リスクがない」という表現には疑問がある。それどころか実際は大いにある。オーナーは「レスターでの功績」を理由に挙げているが、2016 年のプレミア優勝は自他ともに認める「ミラクル」。事実、就任2年目の翌シーズンには、チームが17位に落ちた時点で監督の任を解かれている。
残留争いでの実績がないわけではない。当人もフルアムからのSOSに応えた理由の1つとして、2007年2月から指揮したパルマで、ラスト10試合での勝ち点20ポイント奪取によるセリエA残留に触れていた。
残留争いの辛さを知りながらフルアムを新任地に選んだ自身を「異常かもしれないが馬鹿じゃない」と冗談混じりに表現するなど、常に前向きでユーモアもある67歳は、チームの空気を明るくできるキャラクターを持つ。
その点では、71歳のイングランド人で、降格が危惧されるチームから頼られた、ハリー・レドナップのイタリア版と言えるかもしれない。