プレミアリーグの時間BACK NUMBER
最下位フルアムにラニエリ監督就任。
レスターに続く奇跡の残留なるか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/11/27 17:00
ミラクル・レスターの立役者となったラニエリ監督。フルアムを救えるか。
フルアムとラニエリ色の相性は。
ただし、共通点はそこまで。
降格回避のエキスパートと呼ばれるレドナップとは違い、パルマ時代を除くと、これといった「レスキューの成功例」を持たない。ちなみにレドナップは現在、英国民放リアリティ番組出演者として、ジャングルでのサバイバルに挑戦中だ。
レドナップの4歳年下で、今でも「サッカーこそが生きがい」と断言するラニエリは、システムやスタメンをいじりすぎる悪癖があり、チームをより過酷な状況に導きかねない。
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そうでなくとも今季のフルアムは、システムや選手のポジションに手を加え続けた前監督の試行錯誤が混乱を招き、下位からの出口を見失っているのが現状だ。また攻撃的なポゼッションスタイルは、ラニエリが身上とする守備重視の対極に位置する。
もっとも、オーナーがリスクを承知でラニエリに賭けるのであれば、ギャンブルが成功する可能性もある。開幕前、4年ぶりに復帰したプレミアでの再定着に鼻息が荒かったフルアムが降格圏内で喘いでいる背景には、今夏の積極補強がマイナスに働いたとの見方もある。
左SBとCBをこなせるマキシム・ルマルシャン、中盤の潤滑油ジャン・ミシェル・セリ、FW兼ウインガーのアンドレ・シュールレら、大量12名の新加入が「ヨカノビッチ色」の浸透度を弱めていたとすれば、逆に、就任会見の席で「イタリア人だけに」と前置きし、周囲を笑わせながら自認した堅守志向の「ラニエリ色」がフィットしないとも限らない。
何はともあれ守備の立て直し。
いずれにせよ、新監督にとっては守備の立て直しこそが火急の課題だ。
昨季2部リーグではボールを支配する攻撃姿勢で押し切り、プレーオフ経由での昇格に漕ぎ着けたが、相手攻撃陣のクオリティも高いプレミアでは、後方でのミスやスペースを容赦なく突かれ、開幕12戦で20チーム中最多の31失点を記録する羽目になっている。
それでもなお、組織的な守備の再確認を疎かにした結果の現状と感じられる。
その点、ラニエリは徹底的に守備ドリルを行うタイプの指導者だ。今となっては皮肉な話だが、18年ほど前、ボランチの一角にヨカノビッチを獲得したチェルシーでの1年目もそうだった。レスター時代も、中盤でエンゴロ・カンテが奪ったボールを、ジェイミー・バーディーが相手ゴールに蹴り込むのが特徴。堅守自慢のリーグ王者だった。