プロ野球亭日乗BACK NUMBER
勝利至上主義と大人達の都合……。
筒香嘉智が子供達のため立ち上がる!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byYasushi Washida
posted2018/11/22 17:00
海外で目撃した子供達の自由な練習・試合風景が、筒香の野球観を大きく変えたという。
日本で続発したスポーツ指導の不祥事。
実は勝つために子供が犠牲になるのは高校野球に限らず、日本の若年層の野球、スポーツ(もっと広げて言えば中学、高校、大学の部活動)が抱える大きな問題でもある。
日本中を熱くさせた“金農旋風”は、そのことを考える1つのきっかけを与えてくれた。その点で大きな意味があったことを忘れてはいけない。
「今年はアマチュアスポーツ界のあり方が様々なニュースで取り上げられ、僕自身も心を痛めておりました。若年層における勝利至上主義の蔓延、大人、指導者をそのように導く全体的な運営を考え直す時期に差し掛かっているのかと感じています」
11月20日に東京・港区にあるユニセフハウスで行われた「子どもの権利とスポーツの原則」に関する発表イベントに、こうメッセージを寄せたのは横浜DeNAの筒香嘉智外野手だった。
鈴木大地スポーツ庁長官らも出席して行われた発表会は、1989年の11月20日に採択された「子どもの権利条約」の中で「遊び」や「スポーツ」も子どもの権利の1つと規定されていることを受け、特にスポーツの世界が子どもに負の影響を与えることを憂慮する、という議題で論じられた。
その権利条約中で、スポーツが本来の目的である健全な肉体と精神の成長を支えるものとなるため、今回新たに「子どもの権利とスポーツの原則」が策定されたのだ。
当初は筒香本人がイベントへ出席を希望していたそうだが、この日は球団イベントと重なり、ドイツブンデスリーガでフランクフルトに所属する長谷部誠選手とともにビデオメッセージという形での参加となった。
すべての子ども達に適用されるスポーツの原則とは?
発表された「子どもの権利とスポーツの原則」では
1. スポーツにおける子どもの権利の尊重と援護
2. スポーツを通じた成長への配慮
3. ハラスメントなどのリスクからの保護
4. スポーツにおける身体的、精神的なケガのリスクからの保護
5. 子どもの権利を守るためのガバナンスの確保
6. 子どもの権利に関わる大人の理解と対話の推進
以上の6つの原則を軸に、スポーツ団体、スポンサー団体のあり方と関係者への働きかけなども規定している。
そして最後に言及されているのが、スポーツをする子どもの保護者に対して期待することという項目だった。