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レスター奇跡の優勝から3年の今。
オーナーの遺志と愛すべき中堅。
text by
吉江武史Takeshi Yoshie
photograph byUniphoto press
posted2018/11/21 10:30
ビチャイ氏を追悼するTシャツを着用したレスターの選手たち。クラブに愛されたオーナーだった。
カンテの後継者が現る。
ラニエリ退任後、コーチだったクレイグ・シェイクスピア政権を挟んで現在の指揮を執るのは、元サウサンプトンのクロード・ピュエル監督だ。昨季から始まったピュエル政権で、レスターのチームカラーは一新されている。
まず、チームが大幅に若返った。バーディーとシュマイケルを除けば、今季のチームで顔となっている選手は、優勝より後に加入して守備の大黒柱となった。
ロシア・ワールドカップでも活躍した25歳のハリー・マグワイアであり、今シーズンに入ってイングランド代表に初招集された左SBのベン・チルウェル、ウインガーのデマーレ・グレイ、攻撃的MFジェームズ・マディソンの'96年生まれトリオであり、彼らと同い年で名実ともに「カンテの後継者」となっているナイジェリア代表MFウィルフレッド・ディディらである。
母国フランスのクラブを率いた頃からそうだったように、ピュエルはレスターでも若手を重用している。
21歳マディソンが攻撃の中心。
ピュエルらしいと言えば、とりわけ21歳のマディソンという選手を攻撃の中心に据えたことも大きな変化だ。昨季の2部リーグでベストイレブンに輝き、ノリッチからステップアップしてきた新たな背番号10は、非凡なセンスを感じさせるなかなか面白い選手である。
ピュエルはリールでエデン・アザール、リヨンではヨアン・グルキュフ、ニースではハテム・ベンアルファと、ショーマンシップを持った正統派の10番タイプを好んで起用する傾向がある。
トップ下でフリーロールを任され、鮮やかなボールコントロールとアイデアにあふれたパス、さらに往年のデイビッド・ベッカムを思わせるフォームから繰り出すFKで魅せるマディソンもまた“その枠”だ。
ラニエリ流のカウンターからピュエル好みのポゼッションへとプレースタイルを転換する上でも欠かせないマディソンは、今季のレスターでぜひ注目してほしい存在だ(残念ながら、彼がトップ下で輝くほど岡崎の出場機会は限られてしまうのだが……)。