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男子よりも女子サッカーに期待!?
メキシコで盛況の女子プロリーグ。
text by
トマス・グバンThomas Goubin
photograph byL'Equipe
posted2018/11/20 16:30
男子の試合に負けず劣らず観客が熱狂的なのが、メキシコの女子サッカーの現場である。女子W杯でも期待がかかる。
依然として選手の報酬は安い。
とはいえリーガMXの選手たちの生活基盤は安定していない。
クリスティーナ・フェラルの場合はマルセイユ時代と同等の収入を得ているが、多くの選手はそこまでのサラリーを得られず月2000~3000ペソ(100~150ドル)で我慢せねばならないものも少なくない。月末のボーナスもほとんど期待できない。
チーバス・グアダラハラのようなビッグクラブですら、2017年のリーグタイトルを獲得した際に「観客に愛されたことが選手たちの最大の報酬だ」とGMが述べたのだった。パチューカとの試合がおこなわれたグアダラハラでは、3万人以上の観客が試合に訪れたが入場料収入は微々たるものだった。
「リーガMXの幹部たちは、結局のところ女子選手たちを1部リーグのプロとは思っていない」とレイメルスは言う。
9月10日、ティグレスはチーバス相手にアウェーで3対1の勝利を収めた。試合の後、フェラルら選手たちは12時間かけて車でモンテレーまで戻ったのである。
この惨状こそが、チャンピオンクラブの実態であった。
監督が差別的発言をすることも。
敵はまたチーム内にも存在する。
この8月、モナルカス・モレリアのフィラデルホ・ランヘル監督は、彼が率いる女子選手たちが無能であるのは「女性ならではの優柔不断さ」が原因だと指摘した。
「今日でもメキシコのSNSでは、女性は家庭に留まるべきだといった類のコメントをよく見ます」とフェラルは語る。
「私が子供のころは、ボールを蹴ってばかりいたからお前は男の子だと言われていましたけどね」
とはいえ両親は彼女を支え続けた。ごく一般的な庶民階級の家庭に生まれたフェラルは、8人の兄弟姉妹に囲まれて育った。サッカーは彼女が独立するための手段でもあった。
「奨学金を得て私はモンテレー工科大学に進学しました。メキシコで最も優れた大学のひとつで、その後はフロリダ大学でさらに学業とサッカーを続けました。両親には学費を支払う余裕はまったくありませんでした」
フェラルの世代がサッカーで生計を立てられるようになった最初の世代である。2~3年前までは考えられないことであった。