球体とリズムBACK NUMBER
マリノス中盤で闘う“おーつゆーき”、
チャラ男アタッカーが変身の理由。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2018/10/23 10:00
球際で闘い、攻守で貢献する。かつての大津祐樹からすれば意外だが、才能が生きるのはインサイドMFだった。
レオ・シルバを苛立たせる力。
見ること──それはピッチ上でも生かされている。
最近のパフォーマンスの白眉のひとつに、ルヴァンカップ準決勝第2戦がある。大津はJリーグ有数のボランチ、鹿島のレオ・シルバとの再三のデュエルを制して、横浜に主導権をもたらした。
Jベストイレブンの勲章と豊かな経験を備えるクルゼイロ出身のブラジル人MFが、競り合いで飛ばされ、ボールをキープすることさえままならず、苛立ちを隠せずにいた。
「(第1戦で)相手のクセやボールの置きどころを見極めていたので、プレスのタイミングが良く、ボールを回収できました。相手が攻撃に入った時に、まずその芽を摘むことを心がけています。今のマリノスのやり方では、自分たちのボールを長く持つことが重要。そのためにも中盤が奪い合いに勝たないと」
もともと「自信があった」フィジカルも生かされている。180センチの上背は空中戦で優位に働き、頑健な腰回りは競り合いで威力を発揮。自慢のスタミナは毎試合、上位の走行距離を可能にする。またこれまでは負傷に悩まされることが少なくなかったが、今は「ベストコンディション」を維持できるようになった。
嫁さんのおかげで充実の日々。
それを支えているのは、今年1月に結婚した相手、アナウンサーの久冨慶子さんだ。
「食事や生活がものすごく変わって、怪我が本当に減りました。嫁さんも仕事が忙しいけど、毎朝早く起きて僕のために朝食を用意してくれたり、栄養面について熱心に学んでくれたりしていて。今のプレーができているのは、嫁さんのおかげです」
かつて軽薄を意味する流行語で呼ばれた青年は、国内外で荒波に揉まれ、大切なものの意味を知った。
欧州ではアキレス腱を断裂する重傷や、マルコ・ロイスといった抜きん出たライバルの高い壁にも直面したが、今となってはそれらも「成長のために大きかった」と言える。
そして今年、良き伴侶と心から楽しめる新天地を得た。「今はすごく充実した日々を送れている」と、現在を噛みしめるように話した。