球体とリズムBACK NUMBER
マリノス中盤で闘う“おーつゆーき”、
チャラ男アタッカーが変身の理由。
posted2018/10/23 10:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
失礼を承知で言うと、チャラいアタッカーだと思っていた。
大津祐樹、現在28歳。2008年に高卒で柏レイソルに入団し、4年後のロンドン五輪で3ゴールを決めて華々しくスターダムを駆け上がった。あれからドイツとオランダ、そして古巣の柏での3年を経て、現在は1年目の横浜F・マリノスで奮迅の働きを見せている。
ただし役割はこれまでと違う。攻撃に重きを置いたものではなく、中盤で激しくバトルを続けるセントラルMFだ。4-1-2-3システムの2の右を根城に、「自分が守備のスタートになること」を意識しながらプレーしている。
彼がこの新たなポジションに収まり始めてから、船乗りたちは波に乗っている。先週末のガンバ大阪戦こそ1-2と逆転で惜敗したものの、それまではリーグ戦で3連勝。その間に鹿島とのルヴァンカップ準決勝を1勝1分で乗り切り、決勝に到達した。
アンジェ・ポステコグルー監督の進歩的な手法がいよいよ実を結び始めているマリノスで、大津は中軸のひとりとなっている。献身的なファイターとして。
「たしかに若い頃は勢いが」
ちょっと驚いた。どちらかというと独善的で、ときに派手なプレーを好む選手という印象を持っていたからだ(ハードな働きはもちろん知っているけれど)。
なにしろ、かつては同僚から「チャラ男」と呼ばれ、『おーつゆーきです。』と題したフォトブックも出版されている。茶色い髪とピアスが似合う、甘いルックスのセレブリティ。そんな風に思っていたのは、僕だけではないだろう。あの頃のパブリックイメージが強すぎたとしても。
「たしかに若い頃は勢いがありましたね。プレー面も生活面も」と大津は落ち着いた口ぶりで言う。
「勢いが大事な時もあるんですけどね(笑)。ただサッカー選手を10年以上やってきて色々と経験してきたなかで、気づいたことや見えたことがたくさんあって。いいものとそうでないものが見えて、いい部分を取り入れようとしてきました」