「仕事と思ったことは1度もありませんよ」

「あの子、体は大きくないけど、すごく回転のいい球を放っているでしょう。ああいう子は鍛えれば、すごく良くなるんですよ。それを見るのが楽しみでねえ。僕は、これを仕事と思ったことは1度もありませんよ」

　少年たちの練習を眺めながら、井元氏がつぶやいた。その眼差しは、かつて桑田と清原を見つめたものと変わらないのだろうか。

　辺りはもうすっかり暗くなっていた。照明が照らすグラウンドに、傘寿を過ぎた老紳士が立っている。

　伝説の人は、愛に満ちた野球狂でもあった。

Number963号『大谷翔平　旋風の軌跡』では、大谷翔平の活躍を第1特集としつつ、ドラフト直前ということで第2特集『ドラフトの詩』も掲載しています。その特集巻頭では「KKドラフト　33年後の初告白」という題名で知られざる井元俊秀氏の証言を掲載。野球ファン、必読の内容です！

Number Books

『清原和博　告白』

「自分の人生を振り返って、どこからおかしくなったのかとか、狂い始めたんだろうとか。苦しかったですね……」 覚醒剤取締法違反で逮捕されてから２年。栄光と転落の半生と、自らの罪を悔いながら、鬱病、薬物依存とたたかう日々を赤裸々に綴る。

定価：本体1600円＋税特設ページへ