プロ野球亭日乗BACK NUMBER
高橋由伸監督の雰囲気が変わった!
巨人が一体となって狙うCS下剋上。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/10/12 13:00
エース菅野の好投をベンチで迎えた高橋由伸監督。辞任表明によるチーム一体となったラストスパートで、CSでの下剋上を果たせるか。
「悔しいけれどこれが現実」
レギュラーシーズンで勝率5割を切ろうが、どんな負け方をしていようが、ここでは1回、そういう事実がチャラとなって、新たに日本一を目指す戦いが再スタートする。
だとすると監督の退任という現実は、短期決戦で監督自身を含めたチームにどんな影響を与えるのか。むしろチームを変えるきっかけになる、新たなエナジーを与える可能性すらあるのではないかということだ。
確かに10月3日の退任発表の前後から、高橋采配はこれまでと違っていた。
退任発表の翌4日の広島戦の試合前にはミーティングで涙ながらに選手に退団の報告を行った。
「悔しいけれどこれが現実」
そう語って深々と頭を下げたという。
「今日は監督のために投げようと」
これまでほとんど感情を表に出さないことを是としてきた指揮官の姿に、選手ももちろん感じるものがなければウソである。
「普段は誰かのために投げるとかはないけど、今日は監督のために投げようと思いました」
その試合で今季8度目の完封勝利を果たしたエース・菅野智之投手がこう語るように、この退任劇が劇的な化学変化を起こさせる起爆剤になっているのは明らかなのである。
こうしたチームの変化を感じ取ったのか、高橋監督自身もつきものがとれたかのような表情になり、これまでになく自由奔放な姿が目を引くようになった。
高橋監督の3年間の基本姿勢は人の言葉に耳を傾けることだった。
その典型例がコーチの進言を非常によく採用していたことだ。
シーズン中に何度か「なぜ」という選手起用や采配があったが、取材していくとその選手を一番よく見ている担当コーチの進言を取り入れていたことがほとんどだった。