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荒木雅博引退に思う。中日黄金期を
支えたアライバの「最高傑作」とは。
posted2018/10/12 11:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
合わせて4000安打近く打っているのに、なぜか今でも2人で1人かのように語られる。現役引退を表明した中日の荒木雅博と、内野守備走塁コーチとして巨人を支える井端弘和。打っては俊足と巧打でかき回す1・2番、守っては鉄壁の二遊間と攻守にコンビを組んでいたからなのか。
中日ファンにとって「アライバ」は強かったドラゴンズを思い出させるキーワードだ。
「井端さんがどう感じていたかはわかりませんが、僕はライバル視していました。この人が練習しているうちはまだ僕もやめない。横に井端さんがいたことは、僕の成長に欠かせなかったんです」
10月6日の引退表明会見で、荒木は井端のことをこんな風に語った。年齢は井端が2歳上。入団は荒木が2年早い。二軍でともに鍛えられ、ほぼ同時期から一軍に定着した。独身寮を出た後も、一時は同じマンションで暮らしていた。
仲がいいのかと言われればそうでもない。では悪いのかと聞かれれば、そんなことはない。絶妙の「間」をもつ漫才コンビは、プライベートで時間を共有することはほとんどないという。荒木と井端の関係もそれに近いのかもしれない。
あの好守備以上のコンビプレー。
動画サイトでおなじみの「アライバ」の好守がある。センター前に抜けようかというゴロに、圧倒的な守備範囲を誇る荒木が追いつく。ジャンピングスローではなく、グラブでトス。それを井端が右手でつかみ、一塁で刺す。荒木は「そこに井端さんがいるってわかっていますから」と言い、井端は「待っていたら来るのがわかるんだから」と言う。
「言葉をかわさなくても何を考えているか、わかりますから」
井端のこの言葉に、アライバの熟練度が表れている。
しかし、荒木に言わせると「それ以上」のコンビプレーが存在する。引退会見で「最も心に残っている走塁は?」と問われたときのことだ。
「ヤクルトと優勝争いしたときの走塁ですね。あれが僕の中ではナンバーワンだと言えます」