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ボルトのサッカー挑戦が呼ぶ波乱。
陸上界は広告塔を失ってしかめ面?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2018/09/23 17:00
サッカー選手としてはまだ練習不足の「人類最速」ウサイン・ボルト。
世界各国からオファーは来たが。
ドルトムントへの練習参加、親善試合でのプレーでサッカー挑戦を果たし、もう満足しただろうか、と思っていたが、ボルトは諦めていなかった。
その後、南アフリカ、ノルウェーなどのチームで練習参加。残念ながら契約に至らなかったため、8月にオーストラリア1部Aリーグのセントラルコースト・マリナーズに練習生として参加することが発表された。
ボルトの代理人を務めるリッキー・シムズ氏は、「世界各国からオファーが来たが、特にボルトがまだサッカー選手として未成熟な部分を考慮した結果、同チームがボルトに最適だと思った」と話す。
サッカー転身には批判もある。
今回の挑戦は、大多数には好意的に受け入れられているものの、ジャマイカの陸上関係者からはこんな声も上がっている。
「体力的に厳しいから陸上を引退したと思っていた。サッカーではなくジャマイカの陸上界にもう少し貢献すべき」
ジャマイカ在住でボルトを長年撮り続けてきたカメラマンは「まぁ、ボルトだからね(笑)。まじめには取り組んでいないと思う。サッカー好きなのは認めるけれど、プロになるレベルではないだろうね。仲間とサッカーしたり、(陸上の練習拠点の)大学のサッカーチームの練習に参加する程度だから」と冷静に分析する。
世界の陸上記者からは、ボルトではなく、国際陸連を批判する声が多い。国際陸連のセバスチャン・コー会長は「陸上普及のためにボルトには何らかの役割を担ってもらうつもりだ」と明言していたにもかかわらず、具体案は無し。その間にボルトはサッカー挑戦を表明してしまったため、陸上界は大きな広告塔を失ってしまった。