ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
清宮幸太郎昇格とベーブ・ルース。
からくり時計のように精巧な用兵術。
posted2018/08/31 10:30
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
からくり時計のように、仕掛けを丹念に施していく。それは目には見えることも、目に見えないこともある。
からくり時計――。北海道日本ハムファイターズの用兵である。
魂や思い、意図を細部に宿し、細部から揺さぶる。時には計算が狂ってしまうケースもある。チームを時計に例えれば「部品」が人間、選手だからである。時計の針は、思うように動かない時もある。止まる時もある。一気に、動き出す時もある。
知力を絞るフロント陣、栗山監督を中心にしたコーチ陣。時計を組み上げる「職人」である。優勝、シーズンの最終盤まで逆算しながら戦力を投下していく。身内としては誇らしく、自負しているチームの特長なのだ。
1年間をコーディネートする「職人」たちの気概が1つの抜てきに表れ、世間で「奇策」と評されることもある起用法にも、にじむ。それは少しロマンティックでもある。成功、的中すれば極上のドラマが完成する。それは結果以上の推進力をチームに与える。選手の心に響く。進化や成長、再生への契機にもなり得るのだ。
なぜ静岡の地で清宮が一軍再昇格?
直近の分かりやすい例を挙げる。8月21日。ルーキーの清宮幸太郎選手が約1カ月半ぶりに一軍に再昇格した。いまだコンディション面は万全ではなく、ファームでも守備に就くことを見合わせている状況だった。それでも、優勝争いへ望みをつないでいる重要な局面で登用したのだ。
同日は、福岡ソフトバンクホークス戦。静岡県の草薙球場で1年に1度開催される公式戦で一軍に招集された。アルシア選手が諸々の事情でベストの状態で出場できず、その3日前に出場選手登録を抹消されたという背景もあった。代わる左のスラッガーとして、清宮選手に白羽の矢を立てたのだ。ただ前述の通り、守備での起用の見通しが立たず、スタメンに加えるには制限があったのである。