ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
清宮幸太郎昇格とベーブ・ルース。
からくり時計のように精巧な用兵術。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/08/31 10:30
8月21日のソフトバンク戦で一軍に再昇格してから同28日までに3本塁打を放ち、2試合連続猛打賞を記録するなど活躍の清宮幸太郎。
藤岡の移籍後初登板は古巣ロッテ。
シーズンをマネジメントする中で、随所で細工をする。
7月に千葉ロッテマリーンズから交換トレードで獲得した藤岡貴裕投手。移籍後初登板は8月16日、本拠地札幌ドームで古巣が相手だった。ファイターズに加入後、ファームで2試合計7イニングしか投げていなかったが、先発で投入したのである。藤岡投手にとっては、先発は3年ぶりという大役。あえて、元チームメートたちと向き合わせたのである。
藤岡投手は勝てなかったが登板後、悔しさの中に爽快感をにじませていた。「やっぱり、かなり意識しましたよ。抑えたかったですね。次です」。恨みなどではなく、プロの礎となった古巣への感謝の思いから、好投で恩返しをしたかったのだという。
ケジメをつけ、過去と決別した。野球人生の再スタートと自覚するには格好のシチュエーションだった。
東大卒・宮台は東京ドームで……。
今シーズン入団した、東大卒のルーキー宮台康平投手。8月23日、福岡ソフトバンクホークス戦に先発してプロ初登板を果たした。こちらも白星は逃したが、昨年まで慣れ親しんだ同じ東京都文京区の学び舎の近所である東京ドームのマウンドに送り込んだ。「よく自転車で通っていた」という球場を、記念すべき舞台に設定したのである。
スタンドには、東大野球部OBが集結していたと聞いた。東大出身者として51年ぶりの勝利を渇望する無数の強い思いは、宮台投手の左腕に注がれていたことだろう。そして、応えるように宮台投手も奮闘をした。皆で重ね合わせた夢は叶わなかったが、未来への扉を開き、希望の灯がともった。そこにはロマンがあった。
読売ジャイアンツにドラフト1位で入団しながら未勝利に終わり、米球界にチャレンジ。本場を経由して昨年からファイターズで日本復帰を果たしたのは村田透投手である。
昨シーズンから2年連続で、ジャイアンツを相手に先発をしている。交流戦の3試合のうち、1試合を託しているのである。昨シーズンは記念すべきプロ初勝利を挙げ、今シーズンも白星をつかんだ。村田投手もそれに応え、ドラマを生み出してきた。
元ジャイアンツの実松一成選手、元横浜DeNAベイスターズの黒羽根利規選手は交流戦での古巣との対戦時に一軍へ昇格している。2人とも捕手で、対戦相手の特徴、傾向等を熟知するだけに、戦略面でのサポートという側面もあるかもしれないが、無形の力にも期待しているのだろう。そこには緻密な狙いと、2人への思いとリスペクトが同居している。