“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
裏抜けが生命線と理解してくれ!
瀬川祐輔が柏で口酸っぱく主張中。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/29 07:00
柏はクリスティアーノや伊東純也ら個人個人の破壊力はJ有数だ。それを瀬川祐輔が絡むことでどんなアクセントをつけるのか。
ようやく戦力になれた気が。
「相手は5バック的になっていたけど、両ウイングバックが前に出て3バックのようになったときの裏を狙うようにした。そうすれば3バックがズレると思いましたから。あとは比較的、龍(小池)がフリーで持つ回数が多かったので、3バックと駆け引きし続けたら周りがフリーになると思いました」
瀬川の動きが周りを自由にし、ゴールを引き出したのだ。その動きはとどまらず、長崎の最終ラインと中盤を混乱させつつ、62分には強烈な右足シュートも放っている。69分の交代まで攻撃のリズムを作り出していたのだ。
「ようやく戦力になれた気がします」
試合後、瀬川はこう話した。この言葉は彼が背負っていたものの大きさを感じさせた。
「群馬から大宮に入ったときは、まだJ2のチームからポッと上がって来た選手で、怖いものがないというか、『絶対に僕の方が良い』という大きな自信がありました。でもレイソルに入団したら、前線はタレント揃いだし、自分に対する期待感も大宮のときとは全然違った」
ただ今季はACLにも出場した柏で即戦力としての期待があった。戦力として計算された中では“結果が出ない=役に立っていない”という厳しい評価を突きつけられるシーズンでもあった。
つまり、もう勢いだけでは通用しない時だということは本人も分かっていたのだ。
プロ3年目に味わう“踊り場”。
瀬川は日大二高出身で、全国大会には縁がない無名の存在だった。その後、明治大に入学するも、レギュラー獲得は4年時だった。しかし、ここから彼のシンデレラストーリーが始まった。
そこでスピードとシュートセンスが花開き、右サイドのアタッカーとしてメキメキと頭角を現した。その一方で就職活動では大手飲料メーカーに内定をもらっていたが、Jリーガーになりたいという夢を持ち続けた。そして群馬からオファーが届き、2016年に晴れてプロサッカー選手となった。
2016シーズンはJ2リーグ全42試合出場、13ゴールを叩き出す。翌年は当時大宮に移籍、そして今季から柏の一員となった。右肩上がりのシンデレラストーリーを歩んできた瀬川だが、前述の通り勢いが一度止まった。まさに“踊り場”に立たされたのだ。