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50年前、第50回夏の甲子園の記憶。
『巨人の星』が開始、大阪では……。
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/28 08:00
夏の甲子園100回、時間の流れに埋もれさせてはいけない豊かな歴史がその中には詰まっている。
勝ち上がり、決勝の相手は静岡商。
「えらいこっちゃ、また興國が勝ちよった」
肝心の第50回全国高校野球選手権大会は大阪代表が金沢桜丘、飯塚商、星林、三重と撃破していく。準決勝では、人気ナンバー1だった沖縄の興南を14-0の大差をつけ圧勝してみせた。
「決勝の相手は静岡商かい」
興國の投手はアンダースローの丸山朗。コーナーのギリギリに投げ込む制球力には、ため息がでる。ここまで完封4試合で1点差が1試合と完璧だった。圧倒的に投のチームだが、準決勝では打棒が大爆発している。
秀やんはノートをみつめてつぶやく。
「これでオッズの潮目がかわったの」
勝ちを重ねるにつれ、大阪代表校の評判は高まる。レストランにたむろするオッサンどもが浮足だってきた。それどころか、近所の商店街でも「コーコク」「オーサカ」「ユーショー」と声高にいいかわされ、今や大阪中に響きわたる大合唱になっているのだ。
「こうなったら、マジで応援せなあかんで」
本気の夏、は100回大会だけではない。
人種的にもるつぼだった地域性。
対戦する静岡商は強敵だ。1年生エースの新浦壽夫は大会屈指の好投手で完封3試合、1失点完投2試合と力投を続けてきた。ぶ厚い黒縁メガネがキャラを決定づけている。
「わいは静岡商を応援する」
「さよか。けど、やっぱり興國やで」
「明日は正々堂々と戦おうやないか」
そこにいた皆が、瓶ビールを傾け健闘を誓いあうのであった。