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長谷部フランクフルトがカップ戦で
“ジャイキリ”を食らい漂う暗雲。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/08/24 11:30
長谷部らを起用しながらのカップ戦初戦敗退。フランクフルトはいきなりつまづいてしまった。
それでもフランクフルトはあり続ける。
「ほら、観ただろ」
おじいさんが悲しそうな表情を浮かべながら握手を求めてきたので、握り返すとフニャフニャな手応え。
「手に力も入らないよ。でも、それでもフランクフルトはここにあり続けるんだよ。あのカウンターの上に並んだビールコップを見てごらん。あれは30年前にフランクフルトがポカールを制したときに僕が飲んだコップだよ。あれから30年間待てた。今年ダメでもそんなにショックじゃないよ。一喜一憂していたら身体が持たないからね」
感服致しました。
選手の一挙手一投足に「あーだ」「こーだ」言っていた、己の不明を恥じるばかり。
翌日はフランクフルトから約1時間半、ドイツ南部のバーデン=ヴュルテンベルク州に属するカールスルーエへ向かいました。カールスルーエが戦うのは、原口元気選手や浅野拓磨選手が所属するブンデスリーガ1部ハノーファーです。
試合開始ぎりぎりに着いたため町中にサポーターの姿がなく、「本当に試合があるの?」と不安に駆られましたが、スタジアムに近づくと大歓声が聞こえたので心配は無用でした。
浅野拓磨はたくましさが増した。
カールスルーエはかつての名門で、DFBポカールは1955、1956年に連覇を達成。オリバー・カーン、ギド・ブッフバルト、メーメット・ショル、トーマス・ヘスラーなどの名だたるドイツ代表選手も在籍し、永井雄一郎(元浦和など)、山田大記(磐田)といった日本人選手がプレーしたこともあるクラブです。
この日は、ジャイアントキリングを目論むカールスルーエのホームに、ハノーファーが乗り込んでの一戦。サポーターのボルテージは高まる一方ですが、アウェーのサポーターも負けていません。コールリーダーを含め前列全員が上半身裸。この日は気温が30度を越えていたので気持ち良さそうでしたが、大量のビールを頭から浴びているので、あとでベトベトして気持ち悪そう。
ハノーファーは太ももを痛めた原口選手が欠場も、浅野選手は2トップの一角で先発。茶髪の色が鮮やかになったような、足が一回り太くなったような、そして30mくらいまでのスピードアップの時間がめちゃくちゃ速くなったような気がします。