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長谷部フランクフルトがカップ戦で
“ジャイキリ”を食らい漂う暗雲。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/08/24 11:30
長谷部らを起用しながらのカップ戦初戦敗退。フランクフルトはいきなりつまづいてしまった。
バンヤンにあんな負け方を……。
ドイツ語なので意味を取り違えたかもしれませんが、おじいさん、試合前からなんだかしかめっ面をしています。
「でも昨季、30年ぶりにポカールを制したじゃないですか! 今季はディフェンディングチャンピオンですよ!」
僕がそう言うと、おじいさんがすかさず言葉を返してきました。
「君は先週のスーパーカップを観たかね? バンヤンに、あんな負け方をして……」
「バンヤン」とはバイエルンのこと。確かに先日、我がフランクフルトはカップ戦王者とリーグチャンピオンが戦うドイツスーパーカップで、バイエルンに0-5で惨敗。試合後に長谷部選手に聞いたところでは、フランクフルトのチームと選手はまだコンディションが万全ではないとのことでした。
「僕もチームに合流して2週間しか経っていません……。ドイツスーパーカップは大事な公式戦ですから、ないがしろにしてはいけないんですけども、ワールドカップに参加した選手たちを含めて、コンディションが上がってくるのはこれからだと思っています」
その言葉に期待しましょう。
昨季カップ戦王者が初戦敗退。
そんな中、ワールドカップで準優勝したクロアチアのFWアンテ・レビッチが内転筋を痛めてウルム戦を欠場。あの重戦車のような打開が観られないとは、長谷部選手が言ったとおり、フランクフルトの戦う心は、まだ十分に整っていないようです。
前半はスコアレス。長谷部選手、試合中のジャッジにご不満の様子でロッカールームへ引き上げる際に主審と何やら言葉を交わしていますが、これはいつもの光景。主張すべきときは一切引かない、頼もしい選手です。
後半開始と思ったら、3分後にウルムに先制を許しました。フランクフルトは選手たちの動きが鈍く、嫌な流れ。飲み屋の雰囲気も殺伐としてきました。
隣のおじいさんはヤレヤレというポーズをして、ビールをもう一杯頼んでいます。いや、さすがに4部のチームには負けないだろうと思っていたらウルムに追加点。ヤバい……。キャプテンのDFダビド・アブラアムは冷静さを失っており、セルビア代表のMFミヤト・ガチノビッチは無謀な単独突破を繰り返して攻撃を終わらせています。
結果、フランクフルトが1-2で敗戦。なんと昨季のポカール王者が、あっさり1回戦で敗退してしまったのです。