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井上康生が「新種」と評する
破格の柔道家・高藤直寿。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2018/08/15 08:00

井上康生が「新種」と評する破格の柔道家・高藤直寿。<Number Web> photograph by AFLO

高藤直寿は、9月20日からアゼルバイジャンで開催される世界柔道男子60kg級で連覇をかけて戦う。

リオ五輪の銅メダルという試練。

 一方で、別の意味でも破格な面を見せてきた。

 2014年の世界選手権では練習にしばしば遅刻するなど規律違反を繰り返し、強化指定のランクが下げられる処分を受けている。

 良くも悪くも独特の存在感を示し、第一人者として歩んできた高藤だが、つまずきもあった。2016年のリオデジャネイロ五輪だ。

「絶対に金メダル」と公言して臨んだ大会だったが、準々決勝で一本負けを喫する。その後、気持ちを切らすことなく敗者復活戦を勝ち上がって銅メダルを手にしたが、試合後、涙を浮かべた。敗れた試合について問われると、こう答えた。

「バランスがかみあわなかったです」

 攻めに出る姿勢が出過ぎてしまった分、慎重さを欠いた。それがオリンピックという舞台の怖さだったのかもしれない。

「僕が一番強いと証明したい」

 夢は潰えたが、すぐに前を向いた。

「まだまだ強くならないといけないし、4年後、必ず戻ってきて金にしたいです」

 その言葉が偽りではなかったことをすぐに証明する。

 リオの後、ウェイトトレーニングに本格的に取り組み、他の競技の選手と合同トレーニングを行なうなど精力的に強化に努めた高藤は、'17年ハンガリー・ブダペストでの世界選手権で優勝を果たしたのである。

「僕が一番強いと証明したい」

 そんな思いとともに挑んだ大会での結果にも、大きな喜びを見せることはなかった。その姿もまた、成長を示していた。

【次ページ】 いつも通り戦って連覇する。

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