ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
野球と生きる――。多田野と榎下が
ファイターズで歩む第二の人生。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byHokkaido Nippon-Ham Fighters
posted2018/08/03 11:15
多田野(左)はアメリカで2年、日本ハムで7年プレー、通算18勝20敗。榎下は'11年入団。5年間で35試合に登板し、通算2勝1敗。
珍しい「プロスカウト」という仕事。
紆余曲折を経て、カムバックした。
多田野は2014年にファイターズを退団。その後は新天地を求め、昨年まで3シーズンはBCリーグの石川ミリオンスターズに籍を置いていた。投手兼コーチ。適性はもとより、アメリカでもプレーした経験なども見初められた。
一般的に、なじみが薄いプロスカウトという任務に就いた。
弊球団では他球団の選手の能力評価が、主業務である。ほか各カード、また各試合の戦略、対策の指標となる相手チームの分析もする。
この2業務に関して、噛み砕いて一端を説明すれば、トレードで補強を狙う対象選手の直近の状態をチェックする。また対戦相手の投手と打者の好不調、また配球の傾向などを見極め、その攻略のポイントなどをミーティングで、選手たちへと指南をするスコアラーのわらじも履く。
多田野はイースタン・リーグを担当し、他球団の選手の動向を確認。スコアラーとしては交流戦18試合を受け持った。その合間を縫って、今秋も含めて今後のドラフトの対象となりそうなアマチュア選手の視察もしている。日本中を東奔西走し、転機の1年目を過ごしている。
「練習や試合を見ると、すぐ投げたくなる」
アメリカ、日本、そしてBCリーグ。マウンドに立つことにこだわる執念の野球人生を送ってきただけに、少しだけ未練はあるという。
「練習とか試合を見ていると、今すぐにでも投げたくなったりするんですよ。今年もプレーするつもりでいたので……」
本音を明かしたが、現役を退いたことで見えてきたこと、やりがいも見出してきているのもまた事実である。
「プレーヤーの時は、選手中心だと思っていました。でも今は、多くの方々の協力があってプレーできていたことを、あらためて分かりました。
だから、今もプレーをしている選手を、同じように支えてあげたい、と思うようになりましたね」