球道雑記BACK NUMBER
ロッテ井上晴哉が「主砲」に化けた!
初球も、追い込まれても打つ男。
posted2018/07/28 09:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
もう10年以上前の出来事である。
とある取材で現千葉ロッテ一軍打撃コーチの金森栄治さんの打撃理論に触れる機会があった。
当時はプロの世界を離れ、BCリーグ・石川ミリオンスターズの監督として新たな一歩を踏み出そうとしていた金森さん。
取材中の雑談で筆者が、少年時代、高めの速球にいつも力負けしていたことを伝えると、金森さんは含み笑いを浮かべながらこう返した。
「そりゃあ、基本がなっていなかったからだよ」
きつねにつままれたような顔でポカンとする筆者。すると、そこからの金森さんは雄弁に語り続けた。
ピッチャーがなぜ子供の頃から外角低めに投げろと教え込まれるのか。ボールに一番力が伝わる位置はどこか。俗にいう“柔らかいバッティング”とはどんなバッティングを示すのか。
取材終了時間はとっくに過ぎたというのに、「お構いなし」と言わんばかりに打撃理論を熱く展開する金森さん。ライターとして駆け出しだった当時の筆者にとって、まさに「目から鱗」の取材だった。
ゴルフやふすまを引き合いに出しながら。
バッティングの原理原則とも言うべき話を金森コーチは選手に伝える。
時にはゴルフを引き合いに出し、時にはふすまの開け閉めを引き合いに出しながら、身振り手振りで分かりやすいように。
「バッティングのことだったら、いつでも話してあげるからさ。また聞きに来なよ」
別れ際、気さくな一言をかけてくれた金森さん。そんな金森さんが今年、千葉ロッテの一軍打撃コーチとして6年ぶりにチームに帰って来た。