マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大船渡・佐々木朗希は本当にダルだ。
足も肩も振りも、全てがそっくり。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2018/07/13 07:00
最速154kmというストレートに長身……佐々木朗希はダルビッシュを想起させる。
足、肩、腕、左腕までダルビッシュにそっくり。
実は、試合前のブルペンで、もう胸が躍っていた。
フォームの始動で思い切りよくサッと上がる左足の勢いと高さだけで、投手としての非凡さがわかる。左ヒザが胸の高さほどにまで上がるのに、上体がスッと立ったまま。のけぞりも、かがみもしないバランスの良さと柔軟性。
テークバックでボールを持った右手がお尻の後ろに入るのに、そこから右手を上げていける肩甲骨の可動域の広さ。
しなやかな腕の振りの角度とそのとんでもないスピード。
惜しいのは、グラブサイドが遊んでいることだ。グラブをはめた左腕を体の内側に引きつけるように使えば、もっと楽にバランスをとりながら投げられて、今日のように球筋が荒れることもなくなるのでは……。
そんな修正点まで含めて、何もかもよく似ているのが、東北高2年生の頃のダルビッシュ有(現・カブス)だ。
佐々木の150キロには余力を感じる。
ランナーなしでもセットポジションで投げる佐々木朗希だが、フォームの始動で手より先に足から動いていくメカニズムを持っているから、下半身主導でしっかり1歩踏み込んで投げられる。
うかつに引き合いに出してはいけない偉大な快腕の名前をあえて挙げたのも、単に150キロ前後をコンスタントに投げたからだけではない。
佐々木朗希は、簡単に150キロを投げているように見える。彼の150キロには、まだ“余力”がある。
その気で投げたら、あっさり160まで出してしまいそうで、見ていて怖いし、楽しい。だからこその「ダルビッシュ有」なのである。