マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大船渡・佐々木朗希は本当にダルだ。
足も肩も振りも、全てがそっくり。
posted2018/07/13 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
今年も「甲子園予選」を追いかける旅が始まった。
私の場合、3年生は春の大会でほぼ完了。夏は興味の対象の半分が1、2年生、すでに秋の新チーム取材の準備にかかっている。
この夏は、「岩手」から始めることになった。
第3試合の大船渡高vs.盛岡三高が見たかったから、その時間に合わせて移動して球場についたら、まだ第2試合目が終わっていなかった。
点の取り合いになって、7回までに9-8だから互角の勝負だと思っていた。ところが、8回になって、勝っているほうに連続押し出しにエラーと二塁打が続いて、あっという間に7点を奪って16-8に。そのままコールドゲームになってしまった。
110キロ台のストレート、なかなか入らないストライク、ちょっと強い打球が飛ぶとグラブを弾かれて、内野ゴロが一塁でアウトになると、スタンドから拍手より先にホッとしたようなため息が漏れる。
9人と11人の2つの野球部。
試合終了で両チームの選手たちがホームベースをはさんで整列したら、その列がどちらも短い。
“9人”のチームが、“11人”のチームを破っていた。
9人のチームがお礼をするために応援スタンドの前に並んだら、そこに制服姿の女生徒が1人加わった。
9人のチームにも、女子マネがいるんだ……。
1人でも欠ければ、試合ができなくなる状況。勝つことより、間違いなく負けることのほうが多かったはず。うれしいことよりつらいことのほうが多かったはずの3年間。報われることの少ないことを承知の上での献身。
遊びたい盛りだろうに、自分のことより人のお世話にまわる毎日。
応援席に一礼をしてダグアウトに戻るとき、彼女だけが両手で顔を覆っていた。