マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
平野佳寿は大学時代から匠だった。
メジャー強打者も封じる低めの技。
posted2018/07/11 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
AFLO
野球雑誌『野球小僧』(現『野球太郎』)の「流しのブルペンキャッチャー」を始めて3年ぐらい経った頃だ。
「京都産業大の平野のボールを受けたい」と編集部に申し出たら、
「誰ですか、それ?」
と言われて、ボツになりそうになった。
当時、ドラフト戦線で話題をさらっていた創価大学・八木智哉(日本ハム・希望枠)のように、クロスファイアーとフォークでバンバン三振を奪えるわけでもなく、東北福祉大・福田聡志(巨人・希望枠)のような“ブルブル震える150キロ”があるわけでもない。
140キロ前半だけど低めのコントロールの抜群で、リーグ戦でも投げるたびにいつもいいピッチングのできるコンスタントさが身上で……。
少々、説明に時間のかかるタイプの投手だった。
それでも、捕手が構えたミットに80%前後決められるコントロールを、リーグ戦のピッチングで何度も見ていた私は、なかば強引に編集部に取材の了承をとりつけ、京都産業大グラウンドのブルペンで平野佳寿投手のピッチングを受けることになった。
「変わらないなぁ……」という安心感。
7月4日のカージナルス戦、ダイヤモンドバックスのセットアッパー・平野佳寿の「連続試合無失点」の記録が「26」で止まった。
いつものように7回にリリーフのマウンドに上がった平野佳寿は、いきなり8番ヤイロ・ムニョス遊撃手にライトへホームランを奪われ、2013年に上原浩治投手(当時レッドソックス)がマークした「27試合連続無失点」という日本人最長記録にあと一歩のところで、惜しくも記録がついえた。
メジャーリーガーになってからの「平野佳寿」を球場で見たことはない。今年は、NHK・BSのメジャー中継で見るだけになった平野佳寿だが、見るたびに思うのは、
「変わらないなぁ……」
という一種の安心感だ。