マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
平野佳寿は大学時代から匠だった。
メジャー強打者も封じる低めの技。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2018/07/11 08:00
今季の大リーガーで注目を浴びているのは大谷翔平だが、平野佳寿も評価を上げている。
メジャーに行っても変わらない顔つき。
そりゃあ、世界の野球の“最高峰”へ行ったのだ。去年までと同じじゃ通用しない。もっとよくならないとやられてしまう……。そんな危機感や高揚感や、気負いもあろうし、場合によっては焦りもあろう。当然のことだ。
こっちで投げていた頃とはちょっと違った顔つきになって奮投するのが、これまでの“和製メジャー投手”たちだったように思う。
あのダルビッシュ有だって涼しい顔で投げるようになったのは、メジャーリーガーとしての市民権を得たあたりからで、メジャー1年目最初の3、4カ月までは“あれっ……今、投げてるの、ダルビッシュだよね……?”と、あらためて画面を見直すことが何度もあった。
なのに、平野佳寿は「京セラドーム」や「千葉マリン」の最終回に守護神として投げていた頃と、同じ表情で投げているからスゴイ! と思う。
とにかく、低い。
長身のメジャーリーガーたちの両サイド低め。外角低目も目から遠いから、バットの芯で捉えるのは難しいが、足元の内角低目だって、もしかしたらもっと見にくいかもしれない。
そこを丁寧に、丁寧に、しつこく、しつこく突いていく。
「自分、低いんで、気ぃつけてくださいね」
京都産業大の頃の平野佳寿も低かった。
「自分、低いんで、気ぃつけてくださいね」
ピッチング前に握手を交わしてマウンドへ向かっていく時、京都出身らしい柔らかいもの言いで気遣ってくれたのがなつかしい。
本当に低かった。
腰を下ろして、ベルトの高さで構えると、もっと低いゾーンに快速球を集めてきた。
長い右腕がグニャリとしなって高い位置から振り下ろされると、ショートバウンドか? とハッとするほどのものすごい角度。
地面から這い上がってくるように、140キロが“股間”の高さを襲ってくる。だからある意味、“150キロ”より怖かった。高く抜けたボールは確か、2球か3球だったと思う。