ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
ムバッペ以外もロサーノ、ゴロビン。
ロシアW杯で評価を高めた新星たち。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byGetty Images
posted2018/07/04 08:00
ドイツを初戦から奈落の底へと叩き落としたメキシコのロサーノ。ビッグクラブも放っておかないだろう。
すでにレアル、マンチェスター勢が関心。
ロサーノへの関心が取り沙汰されたメガクラブを列挙すると、'16年の時点でレアル・マドリーとマンチェスター・ユナイテッド、'17年にはマンチェスター・シティが加わり、アーセナルが4500万ユーロを、リバプールが4700万ユーロをオファーかと報じられた。
さらにはユベントスとバルセロナも、今夏の争奪戦に名乗りを上げたと言われている。代理人は、数々のビッグディールを成立させてきたミノ・ライオラだ。W杯での大活躍という絶好の機会を逃すはずがない。
セリエAのローマが手中に収めたと言われているのが、モロッコの攻撃的MFハキム・ツィエクだ。結果こそグループリーグ敗退とはいえ、ポルトガルを苦しめ、スペインから勝ち点1をもぎ取るなど健闘した印象が強いモロッコを、このレフティーが引っ張った。
1993年3月19日生まれの25歳。7歳で父親を失い、道を踏み外しかけた時期もあるというツィエクが生まれ育ったのはオランダで、U-21代表歴を持っている。2015年にはA代表入りの話もあった。ところが声を掛けてくれたフース・ヒディンクが代表監督を退任し、新監督の最初の招集メンバーから漏れると、父親の祖国であるモロッコ代表入りを決意する。
ファンバステンを嘆かせたツィエク。
「なぜ、もう少し待てなかったのか」
当時、オランダ代表のアシスタントコーチを務めていたマルコ・ファンバステンはそう嘆き、ツィエクを選外とした新監督のダニー・ブリントは「ヴェスレイ・スナイデルの後継者をみすみす失った」などと批判に晒された。
今回のW杯では主に左ウイングを務め、思い切りのいいプレーの数々を披露した。1点を追うポルトガル戦の終盤には右から切れ込み、ペナルティボックス内に侵入すると、自らシュートを放つ。パスコースもあったが、ラストパスは選択しなかった。大きな責任を率先して背負えるこうした強いパーソナリティは、誰もが備えているものではない。
メキシコのロサーノとの共通点は攻守の切り替えの速さで、ボールロスト後の迅速なプレスも特筆に値する。イタリアでは、トップ下を意味する「トレクァルティスタ」と司令塔を意味する「レジスタ」を合わせて「トレクァルティレジスタ」とも評されるツィエクに、ローマのスポーツディレクターであるモンチは惚れ込んでいるようだ。所属するアヤックスとの交渉を急いでいるのは、W杯で放った輝きと無関係ではないだろう。