フランス・フットボール通信BACK NUMBER
元ロシア代表の“レジェンド”が激白。
「ロシアサッカーはカオスだ!」
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byPierre Lahalle
posted2018/06/26 07:00
ロシアW杯において、ロシア代表チームは、南アW杯時の南ア代表チームのように、グループリーグで敗退すると思われていたが……。
ロシアの監督達はオーナーの言いなり。
ロシアサッカーの衰退は、ソビエト連邦の崩壊に端を発している。EURO88で決勝に進んだように、ソビエト時代には優れた育成システムにより優れた選手を輩出した。
だが、その後に出現したのはカオスだった。
私のような選手たちの進歩を可能にした素晴らしい育成制度は壊滅し、権力を握った“ディレッタント”に追従する状況が出現した。本来はプロフェッショナルだったはずの監督や指導者の多くも、生き残るために彼らに屈した。
トルペド・モスクワの監督時代(2010年)は私自身がそうだった。クラブ会長は私をオフィスに呼んでこう言った。
「この選手は起用するな」と。
そして試合当日には、ベンチに寄って来て「負けたら君もコーチもクビだ」と宣言した。
「ファック・オフ!」と応えたよ。
その後何が起こったかは言わなくともわかるだろう。
彼のような会長はロシアにたくさんいる。彼らは自分の言うことを黙って聞く穏やかで従順な監督を求めている。
救いのない負のスパイラルで、結果としてサッカーのレベルが大きく低下した。マンチェスター・ユナイテッドのオーナーであるグレイザー家はモウリーニョに「ああしろこうしろ」とは言わないだろう。だがロシアは違う。会長が監督を意のままに扱っているんだ。
ロシア・プレミアリーグの現状は?
世界的に見ても、そこそこの水準を備えたクラブはロシアにも幾つかある。だがほとんどは最低レベルのチームで、そこにロシアの問題の根源がある。
ロシア・プレミアリーグでプレーする選手は、給料は両極端に分かれる……それでも最低限は保障されている分まだましなのだが、本当の問題は下部リーグの選手たちだ。
2部リーグはかつてはそれなりのレベルを維持していたが、今は目も当てられないほどに劣化している。経済的に極端に困窮しているからだ。だから、たとえ1部に昇格することができても、そこで生き残ることができない。