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「危機感はない」発言は多分正しい。
川口能活の記憶と、西野流の原点。

posted2018/06/19 07:00

 
「危機感はない」発言は多分正しい。川口能活の記憶と、西野流の原点。<Number Web> photograph by Naoki Nakanishi/JMPA

2010年の川口能活はサプライズでの招集だったが、その効果も岡田監督は計算していたのだろう。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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Naoki Nakanishi/JMPA

 日本人最多の4度のW杯に出場した川口能活には、大会ごとに忘れられない記憶がある。チームのキャプテンに指名された2010年の南アフリカ大会では、岡田武史監督と開幕前に交わした言葉が印象深い。

「僕はあのチームに1年以上選ばれていなくて、南アフリカW杯のメンバーに選んでもらった。しばらく遠ざかっていたから気づくことがあって、合流してみると停滞感や閉塞感というか、ちょっとぎこちなさのようなものを感じたんです。何か言いたいけど言えない空気があるなとも感じて、なるべく色々な選手に声をかけるようにしていきました」

 国内での壮行試合となった5月24日の韓国戦は、0-2で敗れた。スコア以上の完敗だった。事前キャンプ地のヨーロッパでも、イングランドに1-2、コートジボワールに0-2と連敗した。

 ベースキャンプ地のジョージへ移動してすぐに、川口は岡田監督に呼ばれた。「みんな、どんな感じだ?」と聞かれたはずだ、と記憶している。

「イングランド戦もコートジボワール戦も、自分たちの動きが悪かったと思っている選手はいないです。ただ、結果が出ていないので、少しナーバスになっているかもしれません」

 川口の説明を聞いた岡田監督は、少し驚いたような表情を浮かべた。

「そうかあ、オレは手ごたえを感じてるんだけどな」

 会話はそれで終わった。心に何かが引っかかるような気がしたまま、川口はその場をあとにした。

「これ、行けるかもしれないぞ」

 カメルーンとのグループリーグ初戦を4日後に控えた6月10日、日本はジンバブエと練習試合を行う。30分×3本のゲームを無失点で終えたが、得点を奪うこともできなかった。試合後、翌11日の練習がオフになることを選手たちは告げられた。

「11日の夜にミーティングがあったんですけど、岡田さんはすごく落ち着いていたんです」

 前日に感じた心の引っかかりの理由に、川口は行き当たる。テストマッチで結果は出なかったが、岡田監督は悲観していない。自分たちの目の前に立っている人物は、チームの可能性を誰よりも信じている。W杯をはじめとする様々な国際大会で培われた勝負勘が、チーム最年長のGKにある予感を抱かせた。

「これ、行けるかもしれないぞ」

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