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アンリが驚嘆するムバッペの素質。
「とても19歳には見えない成熟だ」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byMutsu Kawamori
posted2018/06/14 16:30
ロシアW杯に臨む“レ・ブルー”の背番号「10」を、チーム最年少でつけることになっているムバッペ。
「落ち着いていて、知性を感じる」
「ムバッペはパリ・サンジェルマンというビッグクラブの中で活躍しているし、代表でも重要な選手になりつつある。このワールドカップで、2人がどれだけの活躍を見せることができるか。今のフランスが抱える最高のタレントが、世界の列強の前線と比べてどこまでやってくれるのかは、楽しみだね」
1998年、アンリがワールドカップにデビューした時、彼は20歳だった。19歳でロシア大会を迎えるムバッペとほぼ同じ年齢だ。アンリはこの'98年大会以降、フランス代表で確固たる地位を築いていった。
「ムバッペはまだ19歳だ。これから続く長いキャリアを前にしている。ロシア・ワールドカップだけじゃなく、しばらくはフランス代表の攻撃を引っ張ってくれるだろう。彼には世界トップクラスのフォワードになれる素質があると思う。見ていて驚くのが、とても19歳には見えないところだ。経験豊富な、成熟した選手のように私には映る。いつだったか、テレビインタビューの受け答えをしているのを見たことがあった。落ち着いていて、豊かな知性を感じるやりとりだった。個人的にも彼のプレーを見るのは好きだ。信じられないくらいのポテンシャルを秘めているから」
スピードと跳躍力、そして闘争心。
彼のフォワードとしての魅力を、アンリはどう見ているのだろう。
「最大の長所は、ボールを持った時とオフ・ザ・ボールの時のスピードだ。どんなディフェンダーも、1対1でムバッペに仕掛けられると対応に窮するはず。19歳だがフィジカル的にも完成されていて、かなりの跳躍力を持っている。ドリブルの使い分けを見ると賢い選択をしているし、恵まれたフィジカル能力だけじゃなく、頭もいいと私は見ている。デュエルの際に、怖がらずにぶつかっていく闘争心も気に入っているところだ」
爆発的なスピードと跳躍力。中央でも、サイドでもプレーできるプレースタイル。褐色の肌も含め、アンリとの比較は避けられないだろう。事実、フランス国内にはムバッペとアンリを比較する見方も多い。