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アンリが驚嘆するムバッペの素質。
「とても19歳には見えない成熟だ」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byMutsu Kawamori
posted2018/06/14 16:30
ロシアW杯に臨む“レ・ブルー”の背番号「10」を、チーム最年少でつけることになっているムバッペ。
「私と比べられるがムバッペはムバッペ」
「確かに、よく昔の私と比べられる。でもムバッペはムバッペだ。プレッシャーも何も感じず、彼の道を歩んでほしい。きっと素晴らしいキャリアになると思う。また、2000年頃の私とダビド・トレゼゲのコンビを、ムバッペとグリーズマンに見る人もいる。ただ、あの頃とは時代が違う。単純に比較することはできない。私の時代は、試合が現在ほどスピーディじゃなかったからね。私やトレゼゲ、あるいはジダンと比べることはできない。ポジションとしては、確かに似ているけれどね」
ムバッペと、サポートする役割が期待されるグリーズマンを見るとき、アンリは時代の変化を感じるという。
「グリーズマンは前線ならどのポジションでも対応できるし、9番としても、両サイドでもプレーできる。ただ、私だったらグリーズマンはトップ下で起用する。代表でジルーの後ろ、アトレティコ・マドリーでジエゴ・コスタの後方でプレーしてきたようにだ。ムバッペもいわゆる9番タイプではないし、近年は生粋のストライカーは減る一方だ。
主要国の前線を見ても、昔ながらのストライカーは数えるほどしかいない。ハリー・ケインとジルーくらいだろうか。中盤にも下がれて、サイドに開いてスペースを作り、守備でも貢献できるタイプの選手が重宝される時代だ。ボールロストしたらできるだけ早く奪いかえすというのは、アタッカーにとって、もはや常識になっている」
アンリが期待する7カ国は?
ロシア・ワールドカップについて、アンリが期待している国はフランスを含め、7カ国ある。
「ドイツ、スペイン、ブラジル、アルゼンチン、イングランド、そしてベルギーだ。今大会も、強豪国は前線に魅力的なアタッカーを並べている。ドイツのトーマス・ミュラー&ティモ・ベルナー。イングランドのケイン&ラヒーム・スターリング。スペインのジエゴ・コスタ&アルバロ・モラタ。ブラジルのネイマール&ガブリエル・ジェズスに、アルゼンチンのリオネル・メッシ&ゴンサロ・イグアイン。私はベルギー代表でコーチをしているが、エデン・アザール&ロメル・ルカク、それにケビン・デブライネの3人も強力だ。さて、どのコンビがワールドカップを持っていくのか」