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スペインが誇るマジシャン、イスコ。
2度目の世界一へ魔法の杖を振るう。
posted2018/06/14 10:30
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
そもそもなんの目的で、この地を訪れたのかさえ覚えていない。
2002-03シーズンのUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)決勝を取材するため、スペインのセビージャに向かったのは間違いない。デコやマニシェなどを擁したポルトが延長の末にセルティックを下してトロフィーを掲げ、試合後の会見で、まだ40歳になるかならないかの青年監督、ジョゼ・モウリーニョがやけに尊大な態度で記者たちの質問に答えていたのも覚えている。
けれど、その足でマラガを訪れた理由が思い出せない。もしかしたら、シーズンもクライマックスを迎えたリーガ・エスパニョーラを取材しようと、同じアンダルシア州にある近場のクラブを、なんとなく選んだだけかもしれない。
それでも、見上げた空が突き抜けるように青かったこと、たくさんの外国人観光客が横たわる白砂のビーチの向こうに、アフリカ大陸が蜃気楼のように浮かび上がっていたこと、そして、かなりくたびれたマラガの本拠地ラ・ロサレーダのスタンドが、ヒマワリの種の殻だらけだったことは、あれから15年が経った今も鮮明に記憶している。
この地中海に面した温暖な地で、スペイン代表MFのイスコは生まれ育った。自由奔放にボールと戯れるプレースタイルはきっと、あのゆったりと流れる時間の中で、たっぷりと降り注ぐ日差しを浴びたからこそ培われたに違いない。
19歳で移ったマラガで才能が開花。
イスコの名前が世に知られるのは、下部組織時代を過ごしたバレンシアを離れ、19歳の夏に地元のマラガと5年契約を結んでからだ。アンダルシアの風に背中を押され、若きファンタジスタは瞬く間に上昇気流に乗る。
移籍1年目の2011-12シーズンに、サンティ・カソルラとともに攻撃の中核を担い、マラガにクラブ史上初のチャンピオンズリーグ出場権をもたらすと、翌シーズンには初めて挑んだその大舞台で10試合中8試合に出場。3ゴールを挙げる活躍で、このスモールクラブを望外のベスト8へと導くのだ。