サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
代表の攻撃に閉塞感が漂う理由は?
必要なのは西野監督が方向を示す事。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/06/11 17:40
時間がないのはわかりきっていたことだ。その中でいかにメンバーの長所を組み合わせるかが監督の手腕にかかる。
スイスが仕掛けた単純な日本対策。
原口に限らず、吉田麻也も失点するまでの守備は良かったと話している。確かにチャンスを作らせることはなかったが、スイスに必死さはなかった。攻守のポイントとなる大迫を抑え、あとはDFラインの裏を狙ってボールを展開し、そのラインを下げさせる。スイスがやっていたのはただそれだけだ。
日本はサイド攻撃から好機を作ろうとしていたのだろう。しかし、マイボールになってから時間がかかる。クロスを上げるときにはすでにゴール前を固められ、ペナルティエリア内に侵入する選手の数も多くないため、チャンスにはならなかった。
「クロスのときに真ん中にひとりしかいない。それに対して、相手が2人いて、1人が完全にニアにいるから、ニアにも突っ込めない。もう1人入ってきてくれれば分散できるし、ゴールに繋がりやすくなる。
ガーナ戦は決定力不足と言われてもしかたがないけれど、スイス戦に関して言えば、決定力不足と言われると難しくなる」と武藤が語る。
西野朗監督が試合後に口にした「決定力不足」以前の問題だったのだろう。足りないのは決定力ではなく、決定機を作る力だった。
乾にかけた「ボールに触れろ」という言葉。
「どんどん、ボールに触れろ」
後半11分、乾貴士は西野監督からそう指示を受け、ピッチに送り出されている。しかしピッチをワイドに使いたい乾に、パスがなかなか来なかった。
「ボールに触れろ」という言葉は、果たして指示と呼べるのだろうか? そこに戦術的な意図があったのか?
「もっと中に入れということなのかもしれない」と試合後に乾が口にしたが、それが本心だとは思わなかった。中に入ってプレーすれば、自身の武器を発揮できないからだ。彼が抱くイメージはあくまでも、ワイドにピッチを使うことだった。
「攻撃に関しては若干狭くなっていた感じがあったんで、サイドに張った。右で作り、逆サイドに振ってもらえたらフリーのシーンがいっぱいあったし、そういうシーンができればいいなと思っていた。
みんな中央に固執しすぎる傾向があるけど、フットサルをやっているわけではないので、広くピッチを使わないともったいない。僕が出たらそういうオプションもあるよ、と周りに言っていかなくちゃいけない。まだ時間があるので合わせられると思うし、(右で作って左へ展開するというのを)徹底したい。それを決まり事にするくらいでもいいと思う。それは僕が決めることではないけど、言わないよりかは言ったほうがいいと思う」