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岩本輝雄が語る代表デビュー戦秘話 

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岩本輝雄

岩本輝雄Teruo Iwamoto

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posted2018/06/08 10:00

岩本輝雄が語る代表デビュー戦秘話<Number Web> photograph by AFLO

カズさんと映画に行ったら……。

 前半6分に浅野(哲也)さんが直接FKでゴールを奪い、時間の経過とともに緊張することもなくなっていました。ファルカンさんに個人的に要求されたのが、カバーリングの意識と、相手にサイドからクロスを上げられないこと、その2点。サイドバックですから、相手にやられないことをまず意識しましたね。

 しかし自分の持ち味は、あくまでもアタックの部分。長谷川健太さんのクロスに、カズさんと僕が合わせようとした場面がありました。僕は勢いよくゴールネットまで突っ込んでいきました。デビュー戦だろうが得点に絡みたいという意欲は、めちゃくちゃ強かったと思います。クロスをいくつか上げたので、アシストを記録したかったなというのはありましたね。

 結局90分フル出場して、試合は1-1で引き分けました。

 自分のサイドはやられなかったし、まずまずの出来だったかなとは思います。

 先輩たちにはかわいがってもらいました。思い出と言えばカズさんと広島で映画を一緒に観に行ったこと。ファンの人たちが僕らを見つけて、映画館のなかまで人がいっぱい入ってきてしまったんです。カズさんがチケット代を払って、おつりをもらっていなかったので僕が受け取ったら「もらうんじゃないよ」と突っ込まれました。ああ、スターの振る舞いなんだなって後で分かりましたけど。

カントナのいたフランスは強かった。

 キリンカップの2試合目は1週間後、東京・国立競技場でフランス代表との試合でした。ブラン、デサイー、デシャン、ジョルカエフ、カントナ、パパン……そりゃあもうプレーしてすぐに絶対に勝てないと思いましたね。まったくレベルが違う。サイドチェンジのボールが僕の前にバンバン来て、やられてしまう場面が多かった。

 アタックでも横にドリブルして抜いてスタンドがワッと沸いたんですけど、前にはドリブルさせてもらえなかった。アメリカワールドカップに出場できなかったとはいえ、フランスは優勝を狙えたチーム。実際、4年後は優勝しているわけですから、凄いチームとやれたことは貴重な経験になりました。

 代表に入ったことで良くも悪くも注目されるようになりました。

 当時のJリーグは週2試合あって延長戦もある。これに代表のスケジュールが入ってきて、心身ともに疲労が取れなかった。僕に経験があれば対処できたと思うんですけど、ベルマーレは昇格1年目で代表活動も初めての経験。リカバリーのうまいやり方が分からなくて、気持ちはあっても体がついていかなかった。

【次ページ】 「10番」を見て部屋を間違ったのかと。

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