猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ山岡泰輔、ついに縦カット解禁。
「球種は調味料」の独特な哲学。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/05/04 11:00
懐かしの近鉄ユニフォームに身を包んだ山岡泰輔。バファローズのローテの軸として自覚も備わってきた。
「山岡、新球種」って記事が出れば。
タテのカットボールの他にもまだ、投げられるけれど投げていない球種がいくつかあると言う。必要になった時にまた新しい引き出しを開けて、その新球種を使って駆け引きをしていくことが、プロで長く続けていくためには必須だと考えている。
「ボールのキレがいいとか悪いとかの問題じゃないと思うんです。キレがよくても、プロのバッターは張っていたら打てる。プロのバッターが凡打になるのは、予想していないボールが来たり、『え?このタイミングでこのボール投げてくんの?』と不意をつかれた時だけ。だからいくらスライダーがよくても、スライダーばかり投げていたら絶対打たれてしまう。
でも例えば1年に1回、春先に『山岡、新球種』という記事が出たりすると、他のチームはそれが頭に入る。それでその新球種が、パッと見ただけで打てる球じゃないというぐらい完成していたら、そちらが気になって、僕のスライダーが相手バッターの頭から消えるんです。
実際今回も、縦カットばかりが頭に入っていて、本来頭にあるべきスライダーが消えかかっているから、ボール球でも振ってくれる。で、スライダーを思い出すと、また違う球種が頭から消えていく。それをずっと繰り返していけば、バッターは絞れないんじゃないか。プロってそういう駆け引きの場だと思うので」
22歳ながら独自の哲学で調整する。
山岡は22歳とまだ若いが、自分の哲学やスタイルを持っている。
プロ入り後も高校時代からの独自のトレーニングメニューを続けており、オフの取り方も他の先発投手とは違う。他のローテーションピッチャーは、登板の2日後をオフにしているが、山岡は登板翌日をオフにしている。
「だいたいみんな、筋肉痛がくるタイミングでオフにするんですけど、僕は人より筋肉痛になるのが早いみたいで、登板の次の日にくる。それなのにその日にジョグやケアをしたら、筋肉痛が上乗せされてしまう。だから翌日に休んで、2日目にケアをする、というふうにしています」
取材スタイルも山岡流だ。先発投手は、次回の登板についての取材を登板前日に受け、当日は集中するため、試合前の取材を受けないのが通常だ。中には2日前に取材を済ませたいという投手もいる。しかし山岡は登板当日の試合前に取材を受ける。