猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ山岡泰輔、ついに縦カット解禁。
「球種は調味料」の独特な哲学。
posted2018/05/04 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
ルーキーイヤーだった昨年、先発ローテーションに入り8勝を挙げたオリックスの山岡泰輔が、2年目の今年も結果を残している。それは、あらかじめ2年目用に準備しておいた引き出しを開けたからだ。
援護に恵まれず4月は2勝2敗にとどまったが、防御率2.67と安定している。
今年、山岡のピッチングの鍵になっているのがタテのカットボールだ。特に今季初勝利を挙げた4月15日の北海道日本ハム戦では、カットボールで併殺に打ち取りピンチを脱するなど、要所で助けになった。
最速150キロを超えるストレートと、高校時代から得意としていたスライダーやチェンジアップなどの多彩な変化球が武器だが、タテのカットボールを実戦で投げ始めたのは今年から。昨年1年間プロで過ごし、「落ちるボールが欲しい」と感じたからだ。
1年以上前から用意していた縦カット。
ただ、必要だと感じたから習得した、というわけではないと言う。
「それじゃあ遅いですから。プロで1年間やって、『あ、タテのボールがなきゃいけないな』と感じてそこから練習し始めても2年目には間に合わない。数カ月で習得した球なんて、プロの一軍に通用しないから。じゃあ2年目どうするん? となりますよね。
タテのカットボールは、1年以上前から練習していました。単に自分が持っていない球があるから、持っておこうと思っただけです。用意しておけば、『これがちょっと足りないな』と思った時に、『じゃ入れよ』だけで済むじゃないですか」
山岡は、「球種は調味料のようなもの」だと言う。
「料理をしていて、『うーん、なんか足りないな。あれ入れよう』となった時に、その調味料が家になかったらわざわざ買いにいかなきゃいけない。そうなると時間がかかりますよね。だからあらかじめ調味料はいろいろな種類を用意しておくんです。
その球種が必要になった時にすぐに使えるように、何年もかけて練習して、備えておく。あとは使うタイミングを見計らうだけです」