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因縁の相手リバプールとのCL準決勝。
ローマは“34年前の汚点”を消せるか。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/04/24 16:30

因縁の相手リバプールとのCL準決勝。ローマは“34年前の汚点”を消せるか。<Number Web> photograph by Getty Images

バルセロナ戦の劇的勝利後、喜び合ったジェコ(9番)とデロッシ。リバプール相手に34年越しのリベンジなるか。

PKを拒絶したのか、それとも……。

 最後のキッカーとなったグラツィアーニは、2015年10月にファルカンを賞賛するコメントを残している。本物のプロフェッショナルで、あれだけインテリジェンスに富んでいたサッカー選手をほとんど知らないと。その上で、こう付け加えた。

「唯一、咎め立てできるとすれば、PKキッカーを選んだあの時のことだ。パウロ(ファルカン)はこう言った。私はPKキッカーではない、と。たとえ本当にそうだとしても、重要な瞬間には責任を感じるものではないか」

“推定される拒絶”について、トニーニョ・セレーゾは2016年10月にこう述べている。ファルカンとは2年間ローマのチームメイトで、ブラジル代表ではともに“黄金のカルテット”を形成した同胞の見解だ。

「私は(ファルカンがPKを拒絶したという)そのストーリーを信じたことは一度もない。仮に5人目まで続いていたら、パウロ・ロベルトがそのPKを蹴っていたはずだ。ただし、(その真相について)彼と話をしたことは一度もない。あの試合の痛みが大きすぎるからだ」

汚点と表現したのはファルカンの息子だ。

 ファルカン自身は、つい先日、こう語っている。何度も問われ、何度も繰り返してきた弁明だろう。

「なぜPKを蹴らなかったか? 膝の痛みを感じていた。その1カ月ほど前の国内リーグで痛めていた箇所だ。痛み止めの注射のおかげで120分間ピッチに立っていられたが、もう動けなかった。リードホルム監督と話をして、これ以上は無理だと伝えた」

 34年前のその出来事を「汚点」と表現しているのは、実を言えばファルカンの息子だ。

 ロマニスタが彼に会ったとしよう。目の前にいるのがあのレジェンドの息子だと知ると、ファルカンがどれだけ素晴らしい選手だったか、美しい思い出を語ってから、必ず聞いてくるそうだ。で、あなたの父上はなぜ、あのPKを「蹴りたがらなかったのでしょうか?」と。

 覆水盆に返らず、と言う。同じ意味のことわざは、イタリアにもある。

「Acqua passata non macina piu.」

 後ろの部分を削って、Acqua passataだけにすると「流れ去った水」、あるいは「もはや済んだこと」となる。

【次ページ】 チケットを求める行列に息子も並んだ。

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