ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
ファイターズの「母」に贈った引退式。
プロ野球を支える偉大なる女性たち。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph bySponichi
posted2018/04/15 07:00
3月31日、西武戦の5回終了後の整備を終えた後、サプライズで栗山監督から花束を渡されたグラウンドキーパーの工藤悦子さん。
パ・リーグ制覇の日、選手たちが……。
一例を挙げる。2年前の2016年9月、埼玉西武ライオンズ戦。敵地で4年ぶりのパ・リーグ制覇を決めた日のことだ。栗山監督を都内中心部のビール掛け会場のホテルへと送り届けるのが、その夜のYさんの使命だったそうだ。
同じ会場へと向かう選手バスに横付けしたタクシーで待機。隣のバスの窓にふと目をやると、乗り込んでいた選手たちが手を振り、ガッツポーズをしていたそうだ。
Yさんは「それが、本当にうれしかったんですよ。今でも忘れません」と声を弾ませて告白してくれた。
その年には、球団新記録の15連勝を達成。記念グッズのTシャツを限定で受注販売したが、Yさんはこっそり購入していた。きっと慣れないであろうインターネット等を駆使して、何とか手に入れたのだろう、と容易に推測できる。こっそり教えてくれた。
「栗山監督のサインをお願いしたいんですけれど、言い出せないんですよ。私の夢の1つなんです」
グッズを手に入れてから2年を経過しても、夢は叶えていないのだ。何度も、何度も、チャンスはあっただろうが、口には出せないそうだ。
女性ならではの感性、きめ細やかな配慮。
栗山監督の信頼は、言うまでもなく絶大である。関係も、素晴らしく構築できている。公私混同しない。仕事に頑ななまでに徹する姿勢を崩さないからこそ、今もYさんのTシャツはまっさらなままなのだ。それが本物のまごころ、なのである。わが身を振り返り、身につまされる。
ファイターズの職員にも、多くの女性がいる。小職も含め、力強く支えてもらっている。また内部だけではなく、チーム周囲にも多くの女性の存在がある。遠征地の宿泊先の方々は、バスが出発して視界から消えるまで手を振り、送り出してくれる。球場から帰る時には、寒空の真っ暗闇の中でも沿道で出迎え、勝利を一緒に喜んでくれる。
敵地での試合前に温かい食事を提供してくれるスタッフの方々が、選手にメッセージを添えたお菓子をプレゼントするシーンを目にしたことがある。ある選手は次の遠征地まで、大切にバッグに忍ばせていた。女性ならではの感性、きめ細やかな配慮で日々、サポートしてもらっている。