サッカー日本代表 激闘日誌BACK NUMBER
ジャーナリスト大住良之が目撃した激闘の記憶
text by
大住良之Yoshiyuki Osumi
photograph byAFLO
posted2018/04/13 10:00
リネカー擁するトッテナムを4-0でくだし、キリンカップ初優勝を喜ぶカズ(右)とラモス。
「10万ドル、僕らで分けましょう」
この会見に柱谷とカズが出席していた。
「日本代表が優勝したら、優勝賞金10万ドルはどうなるのか」
記者からの予期せぬ質問に、日本協会の責任者は言葉につまった。その手からカズがマイクを受け取るとこう言い放った。
「それも僕らで分けましょう。いいですね?」
その言葉には、プロフェッショナルとしてのプライドがあふれていた。そのプライドが、「僕らも彼らも同じプロ。代表なんだから、クラブチームに負けるわけにはいかない」という気持ちにつながった。積極的な攻撃でトッテナムを4-0で下した試合は、プロとしてのプライドだったのだ。
サポーターの萌芽、代表選手たちのプロ意識、そしてキリンカップ初優勝。日本代表の大きな時代の分かれ目になったのが、この試合だった。日本代表のクラブチームとの対戦は原則としてこの年で終わり、翌年からキリンカップも代表チームだけの大会となる。